「天竺」目指して夫婦モバイル放浪

 
 

 

k日記スペイン編

2000.12.8(金)

 昼に宿を引き払い、重い荷物を引きずり、仁さんの所に移動する。葦の囲い越しに「オーイ」と料理当番兼ガードマンのウィリィーに手を振るとカギを開けて中に引き入れてくれた。私達の姿を見て仁さんがやってきた。「あのテントに荷物入れておいでよ。今さ、お客さんが来てるからちょっと待ってて」とささーと建物の中に消えていった。投資家やスポンサーがたまに見学に来るのだそうだ。

 ヨットを見ながらウィリィーが作ってくれた昼を食べる。なんとも贅沢な気分になる。そして、仁さんと話しをする。いろいろな旅をしてきた仁さん。サハラ砂漠をラクダで越えたり、イヌイットといっしょに生活をしたり、アマゾン川を丸木舟で渡ったり、チチカカ湖を葦船で一周したりと旅人と言うより、冒険家。日本では、石の研究をしていたと言う。石って?・・・なんでも、古代からある巨石とか神事に使われた石に感じるものがあるのだそうだ。温和でいつもニコニコやさしそうな顔をしているが、とても不思議な人だった。

 夕暮れ時の葦船を眺める。マタランギ号(ラパヌイ語で天の目と言う意味)と言う名のその葦船は、夕陽を浴びて黄金色に輝く。いつしかこれが海に乗りだすのか・・・無事の航海を祈った。

 地下鉄まで送ってくれた仁さんとお別れをして、バスターミナルに向かう。今夜の夜行バスでフランスはパリへ向かうつもりですでにバスの予約を入れていた。重い荷物を引きずり、地下鉄の階段を昇り降りする。冷たい風が吹いているのにまたしても汗だく。無事にバスのチェックインをする。(国際バスなのでチェックインをしなければいけないらしい)

 出発までの待ち時間にうめちんが美味そうなピザを買ってきた。温かい内に食べようとビニールをはがしパク。一瞬で食べたくなくなった・・・見た目だけのマズピザに二人で激怒。ダマサレタ−・・・捨ててしまうのはもったいないとぶつぶついいながら口に突っ込む。

 バスは10分ほど送れてやってきた。バス助手君の私達の荷物の扱いに腹を立てながらバスに乗りこむ。そして、30分程遅れてバスは出発した。

 バスは、綺麗な高速道路を北へ走る。いつしか、バスの中のアナウンスは、スペイン語の後にフランス語で流れているることに気がつく。深夜、スペインとフランスの国境を何の審査もなしに通過。無事にフランスに入国。すると、アナウンスもフランス語が先でスペイン語が後になった。フランスに入って1回目の休憩で憤死する。朝ご飯をここで食べたほうがいいと言うアナウンスのままに、幸い、チリの汐見荘で旅人からフランを買っておいて良かったと思いながらレストランへ入ったうめちん。バスで待っていた私のところに飛んできた。

 どうしたの?「いや、来てくれ。いいからいっしょに来てくれ」と手を引っ張ってレストランに連れて行こうとする。眠い目をこすりながら着いていくと「これ見てよぉ」とトレーを指差した。それは、なんの変哲もないトレーでクロワッサンとチョコパン、それに紅茶のポットとカップが置いてあった。「でーなに?美味しそうね」すると、レシート私に見せてくれた。そこには、クロワッサン7フラン、チョコパイ6フラン、紅茶12フラン、合計25フラン、税金11%の2.75フラン、総合計27.75フランと書いてある。1ドルで7フランだから、27.75フランを7で割ると3.96ドルだから・・・えーコレだけで400円近くもするのーーー?目が飛び出た。日本と変わらない物価に憤死寸前。ものすごく美味しいパンだったがこんな物価には耐えられるはずもなく、早くフランスを脱出しようとうめちんに何度も懇願する。バスは、私達の心も知らずに闇の中を一路パリに向けてひた走る。

2000.12.7(木)