「天竺」目指して夫婦モバイル放浪

 
 

 

k日記スペイン編

2000.12.7(木)

 目が覚める。暗い部屋の中。時計を見ると朝の10時。雨戸を開けるとどんよりした雲に濡れた路面。少し寒い。ベットの横にあるテーブルの下を見ると昨日買ったグラスが一個壊れたまんま放置されていた。うめちんをたたき起こす。「むにゃ−、kが眠った後、その机の上から落っこちたんだよ・・・」そして再び眠りの旅へ出発するうめちん。そうは行くかと激しくゆすり続けること2時間。「アスピリンくれー」とうめきながら目を覚ました。

 そんなことを言っていながら、うめちんがシャワーに行っている間に眠ってしまった私。そして「葦舟の人に会って来る」と言って出ていったうめちんを記憶しているが次に目が覚めたのは、午後の3時ごろだった。パソコンに向かっていると、うめちんが誰か連れて帰ってきた。「この人、仁さんっていうんだけど、葦舟に乗ってここからパナマに行くんだって」そう言う説明だった。前々から聞いていたことだけれども、握手をした瞬間、本当にいたんだなぁと実感。初めましての御挨拶に三人でバルに出かける。そこで一杯引っ掛けて、そのまま葦舟を作っているキャンプへ向かう。ヨットハーバーにはヨットがたくさん並び、おしゃれなレストランが海沿いに並ぶ。そんな一角にそのキャンプはあった。坂を下って行くと、あれかぁ・・・目の前に大きな船が現われる。近くに来ても分からないほど妙に回りの風景に解け込んでいた。そして、その大きさに開いた口はふさがらないほどびっくりする。

 「ホントウニ、コノフネデ、オキヘデルンデスカ?」思わず聞いてしまった。すると「出たいんだけど、今ね、どうやって海に出すか悩んでいる所なんだよ」と、うで組しながらいろいろな質問に親切丁寧に答えてくれるじんさん。そして、「船の上には女性は登れないんだよ。何でかって言うと、前の計画のときにね女性を乗せたことがあるんだけど、そしたら海の上で真っ二つに割れちゃってさ・・・そう言う、迷信ってあるんだって。だから、ごめんね」としきりに謝る仁さん。そんな滅相もございません。私が乗って皆さんが海に投げ出されることを考えれば、乗らないほうがイイに決まってます。

 船の上で一人、働いている人がいた。仁さんが「オーイ、テバ」とその人を呼ぶ。するとのこぎり片手にノッと現われた。彼もこの船に乗る一員で「テバ」さんと言い、イースター島からこのプロジェクトのためにわざわざやってきたらしい。そして彼も「セニョリータ、スペイン語は分かるか?この船には、女性は乗れないんだ。ごめんよ」と謝っていた。みんないい人達だと思った。そして、テバさんを加えてバルに向かう。でも、ビールを一杯飲んでキャンプにとんぼ帰り。このバルは高いから、スーパーで酒を買って来てキャンプで飲もうと言う仁さんとテバさんの提案にケチな二人がうなずいたからだった。とてもうれしい申し出、ありがたい。

 そして、キャンプで夕飯をご馳走になりながら船の話や旅の話などをしながら飲む飲む飲む。酒が進む内に饒舌になってくるテバさん。そして「どうして、スペインに、いやバルセロナに着いてすぐここへ来なかったんだ?キャンプとか用意して待ってたんだぞ」と聞いて来る。でも、初対面だし、突然来ては失礼かと思ったし・・・何と答えて言いかわからず困っていると「いや、日本人だからだよ」と仁さんがフォローをいれてくれた。「なんだ、遠慮と言う奴か?」ウンウンと首を縦に振ると「そんな遠慮は要らん」と少し不満気味の様子。ラパヌイ(イースター島の本当の名前)では、そんな遠慮は無礼らしく、会いに来たらその家に真っ先に行く。それを快く迎えるのが当たり前なのだそうだ。「ラパヌイにジンといっしょに遊びに来い。俺の兄は、ジンを知っているから、快く迎えてくれるだろう。だから、明日はここにこればいい」とうれしいことを言ってくれる。お言葉に甘えて、出発まで荷物を置かせてもらうことにする。

 すっかり真っ暗だった。街のオレンジ灯の輝きが、葦船をぼんやり照らす。綺麗だった。海の冷たい風が肌に刺さる。寒い・・・でも、心は温かい。人の温かい心に触れたから、そんなような気がした。

2000.12.6(水)