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「天竺」目指して夫婦モバイル放浪

 
 

 

k日記ニカラグア編

99.12.16(木)

 朝、波止場に行くとコーン島へ寄る船が出ると言うので、乗せてもらおうと荷物を持ちにホテルに帰る。帰り際、うめちんがいくつか並んだ樽を覗いていた。横顔を見るといつものうへうへ、いいもの見つけちゃった笑いをしている案の定「これ、買おう」とにこにこ言ってきたので私も樽を覗いてみると、なんの変哲もない赤みの肉が積んである。他の樽には、腸などの臓物系が入っている。なんでこんなの欲しがるの?と次ぎの樽を見てびっくり仰天。

 何処かで見たことのある顔が2つこちらを向いている。もっもしかしてこれって・・・浦島太郎さんが乗ってた奴・・・もしかしてじゃなかった。これって食べるの?と眺めていると、すでにうめちんが購入していた。うまいのだろうか?頭とか手とか持っている奴もいる。どうやって食うんだろうとしみじみ考えてしまった。げてものを買ってうはうはのうめちん。それを横目で見る私。いつもの事である。

 荷物を背負い、波止場に戻ると先ほどの倍近い人が船に群がっていた。近づいて行くと船の中から名前を叫んでいる人がいる。人垣をかき分け、名前を呼んでいる人をよく見るとなんと軍人さんではないですか。なぜか名前を呼んで本人かどうかの確認が済むまで船に乗せてくれないらしい。うめちんも名前を告げて見るが一向に乗せてくれない。はて、どうしたら乗れるんだ?と廻りの人を見ると手に手にチケットを持っている。はて、チケットって何処で買うんだ?といろいろ聞いて見るとずーと向こうだと指を差す。

 なんでも、チケットを買ったところで名前を記入して、それをチケットセンターのオジさんが持ってくるまで船には乗れないとのこと。慌ててうめちんがチケットを買いに走る。無事に船に乗れる。

 最近、ニカラグアのカリブ海側では、領土問題など他国といろいろもめているらしく、一速即発の状態に近いのではと怪訝な顔で言う人もいた。そのため、海側に行くにしたがってそういうチェックが厳しくなっているらしい。そういえば、ラマを出るときも軍人さんのチェックがあったなぁ。穏便に解決して欲しいが、私には口を挟むいわれはないので、まあ、無事に船に乗れたからよしとしよう。 

  船は、ゆっくりと出発する。屋根に陣取った私達は、青い空と海風を受けてしばらくはご機嫌な船旅だった。もう一つの港に寄ってまたも人を積めこむ。またも軍人さんのチェックで乗り降りしている。時間が掛かったのは言うまでもない。やっと人を積めこんで出発したときには、船上は、人と荷物の山、山、山、しかも屋根に乗っていた人達まで下に降ろされたからたまったもんじゃない。まるで奴隷船のような状態に陥る。もちろん屋根にいた私達も降ろされ、あまり人のいない、船尾の方へ人ごみをかき分け逃げてきた。

船は、ゆっくりゆっくり外海へと進路を進める。途中から乗ってきたオヤジがぼろぼろの袋からおもむろに何かを取り出した。木の板に太いビニール紐が何重にも巻き付いていて紐を止めてあるところにスプーンがついていた。オヤジは、止めてあるスプーンを外したかと思ったら、木の板をうめちんにホイっと渡し、糸を出せと手で指示してスプーンをポイっと海に投げた。なんと、定期船でトローリングしようと言うのだ。しかも、リール、竿無し、手で糸を固定。糸を持っている人自体が竿なのだ。しかも、安全帯もしていない。これじゃあ、運良く魚が掛かっても引張りきれずに逆に魚に引っ張られて海にドポーン、哀れうめちんは海の藻屑と消えましたになってしまう。気をつけてねと言って見るが、もう楽しくってしょがない言う顔で大丈夫だと言っている。まあ、骨と皮と筋しかないから魚の餌にもならんから大丈夫だろうと思った。

 外海に出ると次第に揺れが襲ってきた。私は、船に弱いということを忘れていたらしい。こんな船に乗るんじゃなかったと後悔するほど気分が悪くなってきた。うめちんは、平気な顔でトローリングに夢中である。何か手応えがあったらしく糸を引っ張るが重くて引っ張れないらしく「k、手伝え!」と叫んでいるが私はそれどころじゃない。

 どんどん気分が悪くなってくる。すでに数人が入れ替わり立ち代り手すりから半身を乗り出してケロケロやっていた。うめちんは、大きな魚だーと叫びながら、廻りにいた人たちに手伝ってもらって糸を回収したが大きなゴミが釣れただけだった。ちょっと落ちこんでいる様子だったがまた、こりもせず糸を海に投げていた。 私は、起きているのに限界だったので、寝ている間にコーン島に着くだろうと思って冷蔵庫の上で横になって寝てしまうことにした。

  どのくらい寝たろう?照りつける太陽に顔を焼かれ目が覚める。辺りを見回すが、海の色が深い青に変わっただけで、後は特に変わった様子はなかった。気分が悪いのはいっしょだったので起き上がるまではできなかたが、吐くほどの気分の悪さではなかった。

 不意に肩を叩かれ顔を上げると「冷蔵庫開けるって」とうめちん。うめちんの手を借りて、冷蔵庫から飛び降り甲板に立ちあがった途端、大きな揺れ。いってしまった。うめちんの支えを振りきり、急いで手すりにかけより、半身を乗りだしケロケロケロー。そこからはもう、ほっといてくれの世界だった。

 4時間でコーン島に着くはずだった。しかし、もう6時間も乗っている。あれから胃の中はもうかっらっぽだと言うのに、何度となくケロケロする。うめちんが「もうすぐ着くよ」と励ますが、一向に島に着かないので信じられなくなっていた。

 日が傾き、空が赤に変わったり、夕陽が沈む。夕陽に照らされ船は変わらぬスピードで進み続ける。沈む夕陽を放心状態でぼんやり眺める。今まで見た夕陽の中ではたいした事のない夕陽だったが、すごく綺麗に思った。気分もだいぶ落ち着いた頃、ようやく島の明かりが見えてきた。船に乗って9時間、やっと着いたのである。

 船着場から一番近い所に宿を取り、持ってきた亀肉を料理してもらって食べた。なかなかの味だった。宿のベランダでビール片手にくつろいでいると、豚が一匹ポテポテと通りすぎる。その後から、人が紐を持ってついてくる。豚の散歩?犬は野放しで勝手にその辺うろついてるのに、豚の散歩なんて初めて見た。爆笑!! ああ、なんと長い一日だったのでしょう。街の明かりが静かに消えていく。

 
99.12.15(水)