「天竺」目指して夫婦モバイル放浪

 
 

 

k日記インド編

2001.5.14(月)

 朝起きると、ふわっと体が軽かった。なんだか昨日より楽だな。そう思って、熱を測ると37度まで落ちていた。うめちんが町へ出かけていった。一人になった、その部屋を眺めると隅に埃がたまり、ファンの風になびいて非常に汚く見えた。うーむ、ちょっと嫌だった。そういえば、なんとなく喉も痛い・・・この埃がすべての原因かもしれない。そして、そのまま、寝てりゃいいのに、掃除をしてみた。昨日の汗まみれの服もついでに洗濯した・・・

 部屋は、非常にきれいになった。洗濯物も順調に乾いていた。私の熱は、38.5度まで上昇していた。帰ってきたうめちんは、きれいな部屋に驚き、洗濯物が風にたなびく脇で、ベットに倒れる私を見て驚いたようだった。私は、そのまま、眠ってしまったらしい。

 重い体を引きずって、夕飯を食べに3階に上がっては見たものの、あまり食欲が沸かない。熱を測ると39度に達していた。「うめちん、もう限界だ。明日、熱が下がっても医者・・・」最後まで話さないうちに彼は、「医者を呼んでくる」そう言いながら歩き出していた。「え、でも、明日でいいよ、もう夜、遅いし・・・」聞いちゃいなかった。久美子さんに信用できる診療所を紹介してもらって、彼は、宿を出ていった。

 彼は、一人で帰ってきた。「k、着替えて、いっしょに診療所に行こう。たくさん患者さんがいるからこれないって、だから、連れて来いって言うんだ」そうですか。もそもそ着替えていると、せっせとビニール袋に私のシャツやパンツを詰めているうめちんがいた。どうすんのそれ?「症状を話したらそのまま入院かもしれないって。いろいろ、調べたほうがいいって言うんだよ。だから、着替えとか歯ブラシとか一応、持って来いって言ってた」はっ?入院?入院って・・・とにかく、久美子さんに笑われながら見送られ、うめちんに手を引かれるまま、夜の雰囲気漂うベンガリートラを歩く。体は、ふわふわ宙を浮いている感じがする。ぼんやりと光るライトの光が目に前にふわふわ現れる。不思議と心地よい風が吹いてくる。どうなるんだろう私?少し気が重かった。

 その小さな診療所は、夜の賑わいを見せる野菜市場通りに面したところにあった。こんなところに診療所があったんだ。今まで全然気がつかなかった。小さい待合室がしつらえてあった。子供から老人までひっきりなしにやってくる。しばらく待つと助手のインド人が私たちを手招きしている。ベニヤで作った簡単なドアをくぐると小さな部屋に事務机があり、そこに先生らしき人が座っていた。「さあ、ここに座って」先生らしき人の前にあった銀色の丸椅子に勧められるまま座った。

 聞き取りにくい英語だった。「熱は今どのぐらいある?」そう聞きながら、血圧を測り、喉を調べ、聴診器を胸に当てた。そして「じゃあ、奥にあるベットにサンダルを脱いで上がって」後ろを振り向くとテーブルカバーがかかった異様に高い台に枕が乗っているのが見えた。言われるままにそこへ向かう。唖然とした。汚い洗面台の横に適当にしつらえたベットだった。ねずみの糞が落ちて、埃が端にたまっている。枕も誰が横になったかわからない程汚かった。足が伸ばせないそのベットに横になるのは嫌だった。別の病気になりそうな気がした。無理やり仰向けに寝かせられて、腹のあたりを押している。すぐ終わった。ほっとした。そして「入院したほうがいい。この熱が何が原因だか検査をしなけりゃわからない。インドには、マラリア、コレラ、肝炎・・・・たくさんの病気がある。薬を飲んでも熱が下がらないのであれば、その可能性があるかもしれないから。それに、君は弱っている。栄養を取らねばならない。病院にいれば何かあったとき安心だ。入院したほうがいい」この診療所に入院設備があるのか?あったとしても、こんな汚いところには、入院したくない・・・「もうすぐ、診療が終わる。入院先の病院に案内してあげるから少し待っていなさい」ここじゃないらしい。少しほっとしたが、インドの病院って・・・

 オートリクシャは、どこまでも走る。どこまで行くのだろう?先生が乗ったオートバイが前を走る。人気のない路地に入った。鉄の門が大きく開いてそこから、光が漏れていた。大きく開け放たれた建物の入り口に小さな机と椅子が二つ並んでいた。その横に木の大きな台が数個並んでいた。こんなベットに寝かされるのだろうか?助手に言われるままついていくとちゃんとした部屋だった。ベットが2台置いてあり、1台は点滴がかけられる病院ベットだ。シーツも新しいものらしくピンっとマットに張ってある。助手に横になれといわれ、横になる。

 しばらくすると、助手二人が何かを持ってやってきた。「すべて新しいものだから安心しろ」と注射器と点滴針を見せ、目の前で開封してくれた。点滴を打ち、お尻に一本、注射をしてくれた。そして、点滴紐につながれた私。「君は、ここに泊まっていっていいよ。トイレもこの部屋にあるし、何か不自由があったらこの看護夫に言ってくれ。今日は、ゆっくり休むんだよ」そう言って先生は出ていった。

 頭のところにある窓から冷たい風が心地よく吹いてくる。入り口には、珍しいのか大部屋に寝泊りしているインド人が入れ替わり立ち代りやってきた。

 入り口のドアを閉め、かぎをかけると急に静かになった。とりあえず普通の病院で安心したね・・・そんな話をしながら眠りについた。本当に私、どうなっちゃうんだろう?

2001.5.13(日)