「天竺」目指して夫婦モバイル放浪

 
 

 

k日記インド編

2001.3.4(日)

 宿でグダグダしていた。インターネットに行ったきり何もすることもなく宿に戻ってきてしまった。「そうだ、映画でも見に行こう」夕闇迫る頃、なんとなく思い立って映画館へ足を運んだ。入り口で「一人30ルピーだ」というオヤジが前に立ちはだかる。そんなオヤジの横をすり抜け、チケット売り場らしき窓口へ向かうが、厚い木の板がびったりとはまっている。どうやら閉まっているらしい。無理やりこじ開けると、中に一人の男がいた。「今やっているのは7時からで次は9時からだ」時間を聞けば7時をちょっと回っている。無理やりこじ開けた木の板に「大人20、子供10、女20」と流し書き風に書いてある。入り口で立ちはだかったオヤジを睨む。・・・私たちから、映画代をぼったくろうとしただろ?お茶目な顔をして、そそそと逃げていった。うめちんと顔を見合わせる。途中から訳のわからないインド映画見てもね・・・また、改めて来よう。すっかり暗くなった外へ。

 何もすることがなくなった・・・商店のオレンジ色の光が煌煌と埃舞い上がる通りを照らしていた。のんびり歩く牛、雑踏を縫うように走り抜けるリクシャの群れ。思い思いに歩く人々。客を呼び止めようと飛び交う声・・・当然のように、ただ、手をつなぎ、ぶらっと歩いた。「何をしようか?うめちん・・・」「ん・・・どうしようか?」埃と雑踏の中へ融けて行く二人。結局のところ、通りを一周して宿に帰ってきてしまった。

 隙間なく走り去る車やバスの隙間を縫って、ニューデリー駅前でオートリクシャを捕まえるうめちん。値段の交渉をしている。リクシャのオヤジの顔は渋っている。もちろんうめちんの言った値段に対しての反応だろうが、どうやら行き先にも渋っているようだ。こいつはだめだときびすを返したうめちんの背中に「わかった」と言う声がかかる。そそくさとオートリクシャに乗り込んだ二人。渋滞の道路を走り出した。国際空港へ・・・昨年、ペルーにも遊びに来てくれた私の友達のそのちゃんが今夜の便でインドにやってくる。いつも、なぜか、夜を選んでやってくる彼女をインド人の餌食にさせないために空港へ迎えに行くことを約束していた。オートリクシャは失敗した。今の時期、デリーの夜は結構寒い。冷たい風が私たちに襲い掛かり、埃と粉塵が排気ガスと共に私たちを襲う。視界も霞んで見える。次第に喉も痛くなり、セキが止まらない。そして走ること1時間弱、空港の到着ロビーの前に到着した。

 ロビーに入るのに金がかかる。時計の針は、夜の11時。入り口にいた警備員に「マレーシア航空は何時につく?」と聞くと「12時20分だ。迎えか?」そうだと言うと「ここは、ここと向こうと出口が2つあるから、ロビーに入って待ったほうがいいぞ」そう言うのでロビーでコーヒーでも飲みながらのんびり待つことにする。ロビーには人があふれかえっていた。ターバンを巻いたシーク教徒の人が多いような気がする。人の観察もそこそこにロビー内をうろつく二人。

 カラフルな体重計が目に入った。そう言えば、インドに来てからだいぶ痩せたような気がする。乗ってみようと思い、うめちんにお金をもらう。体重計に乗り、白と赤の円形の振り子が止まったことを確認してコインを入れる。ガチャコンと言う音と共に銀色の長細い触手が目にも止まらぬ速さで厚紙を叩く。わくわくしながら、叩かれた用紙が出てくる受け皿に手を入れる。が、ない。体重が印字された厚紙が出てこない。なぜだ?いつもと同じ動作なのに、間違ったことは一つもしていないはずだ。その辺にいたインド人も動作付で確認してくれたが、私は間違っていない。受け皿を覗き込む。その辺にいた、インド人も覗き込む。うめちんも覗き込み、手を突っ込んで引っかかっていないか確認している。叩いてみたり、ゆすってみたりするが、厚紙は出てこなかった。これは、故障してるんだ・・・でも、一体誰に故障のことを言ったらいいのだろう?思案に暮れながら「インドは、こんな機械までボリやがる・・・」ぼそっと悪態をつき、体重計に軽く蹴りを入れる。結局、体重もわからずお金も返ってこなかった。

 いつのまにか、掲示板のマレーシア航空の欄に到着を知らせる緑のランプが点滅していた。アナウンスも流れている。入国を済ませた人が次々と出てくる。その通路の柵にびっしると群がるインド人達にまぎれて、そのちゃんを待つ。1時間も待っただろうか?まだ、出てこない彼女が心配になってくる。もしかして、マレーシアで飛行機に乗れなったんじゃあんまい?それとも入国拒否されてるとか?いやいや、見逃してしまって、すでに外へ行ってしまったのでは?んーどうしたのだろう?不安は募る。インド人の間をうろうろと歩き回る。あ、きたー。遠く、なにくわぬ顔でのんびり歩いてくるそのちゃん発見。インド人の餌にならないうちに捕獲成功。タクシーで無事に宿まで連れてくる。そのちゃん、いろいろな意味でインドへようこそ。

2001.3.3(土)