「天竺」目指して夫婦モバイル放浪

 
 

 

k日記チリ編

2000.1.16(日)

 昨日は、あんなに寒かったのに今日はそんなに寒くなく、朝までぐっすり眠れた。足に毛布を巻いて寝たせいかもしれないが、汗で濡れた服で寝たのがいけなかったらしいと気がついた。

 ぼっこれコンロに新しいウレタンパッキンを詰めて、手早く朝ご飯と昼ご飯を作る。案の定、5分もしないうちに燃えてしまったが、火がついたらフッ消すを繰り返して何とか無事にご飯が出来た。これから寒さをしのぐウレタンマットは、どんどん小さくなっていく運命にあることだけは間違い無かった。寒さと飢え、どっちを取るか・・・悩めるところだった。

 荷物をまとめテントをたたみ、フリーキャンプサイトCampamentoItalianoに向うことにする。CampamentoItalianoは、PaineGrande山のふもとにあるので、一旦、ここまで来た道を引き返し、FantasticoSurにほど近い手前の分かれ道をLagoNordenskjoldへ向って歩きだし、PaineGrande山を目指してひたすら歩けば付くはずだった。自分達の地図には、分かれ道から途中にあるRefugioLosGuernosまで、そこからCampamentoItalianoの間だけ、なぜか時間が書いてなかったが、だいたい4時間から5時間くらいで、合計8時間も歩けどつくだろうと考えて歩き出した。

  知った道ほど歩きやすい物はないので、来た道を帰るのは楽勝だった。分かれ道まで来て、大地にどかっと腰を下ろし、広い草原を見ながら朝作ったサンドイッチをワインと共にぱくつく。とても幸せな気分が、自分を包み込むような感じがした。ダメトレッカーの本領発揮。またもや歩く気力が萎えてきてしまった。このまま、ここでお昼寝がイイなぁなんて、道ゆく色とりどりのトレッカーとその向こうの険しい山々をぼーーと眺めていた。

 「先が長いから、もう行こう」と言ううめちんの言葉で我に返り、重いバックパックを担ぐ。しばらくは、平坦な道が続いた。のほほんと歌を歌い、木にとまる綺麗な鳥を眺め、草原の向こうの山々をながめながら、ぶらぶら歩いた。と、一本の沢が目の前にはだかる。ここだと渡るところに矢印があったがどう見ても渡れそうになかった。うめちんが、ここなら渡れるかもと探してきたところは、端と沢の真ん中に1つずつの石が置いてあるところだった。 

 うめちんは軽々と渡って行った。では、私もと足を伸ばすが真ん中の石に届かない。ポーンと勢いよく飛んで足を乗せた途端、真ん中の石がゴロンと動いた。当たり前だが、片足が流れる冷たい沢に落ちた。うううーと唸っているとうめちんが「もっと、忍者のように早く飛ばないと」と腹を抱えて笑っていた。長いコンパスもってるっていいなぁ、私のコンパスは短か過ぎる。なんか、損してるような気がしてきた。そして、このコンパスの差による難題は、これからずっと付きまとってくるのだった。

 山あり谷ありのでこぼこ山道をひたすら歩く。歩って、歩って、歩くがいつまで経ってもRefugioLosGuernosは現れなかった。もう着いてもイイ頃なのに、つぶれちゃったとか?なんて考えるほど歩きつづけていた。途中、大きな岩を登ったり降りたり、大きな沢を渡ったりと大変な行程が待ちうけていた。コンパスの長いうめちんや大きな外人どもには楽勝なことだろうが、コンパスの短い私には、相当な難関に見えた。一生懸命、歩いているがうめちんのコンパスには、到底追い付けるはずも無かった。でも、やさしいうめちんは、私がくるのを待っていてくれた。おかげで一人もくもく歩けども寂しくはなかった。

 一向に見えてこないRefugioを発見したときは、声も出ないほど疲れ果てていた。足には、2つばかし豆が出来ていた。Refugioの地図を見ると分かれ道からここまでは6時間の行程だと書いてあった。しかも、自分の地図と見比べるとRefugioの位置が違ってるではないか。いくら歩いてもRefugioが出てこないはずだと納得してしまった。ちなみにここからCampamentoItalianoまでは2時間の行程と書いてある。後、2時間歩くのか・・・ため息だけが出てきた。

 バックッパクの重みで肩と腰の感覚が無くなっていた。足の豆は、パンパンに脹れあがり水が溜まっている。後、2時間も歩けるだろうか?と疑問に思うが、Refugioのキャンプサイトに払う金は一銭としてなかった。痛くても歩くしかないのだ。

 ほとんど、気力だけで歩いている状態だった。しかも、Refugioを出たのが夜の7時30分。早くしなければ暗くなる。のんびりしてはいられなかった。西日がサンサンと容赦無く私達を照りつける。疲れた体にはきつかった。さらに追い討ちをかけるように険しい道のりが立ちはだかる。

 やっとCampamentoItalianoに着いた時には、膝が笑っていた。痛い足を引きずって急いでテントを張り、壊れたコンロに鞭を振り暗くなる前にご飯を作った。一部始終が済んだとき、足は動かなくなっていた。寝袋に入って足を思いっきり伸ばすと気持ちよかったが、痛さが無くなるわけではなかった。明日は、のんびりしよう・・・と今日の辛い行程を振り返ると切に思うのでした。

 
2000.1.15(土)