「天竺」目指して夫婦モバイル放浪 |
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k日記ブラジル編 2000.7.14(金) 目を覚ますと、いつものように牛次郎の天井が見えた。カーテンを開けると銀色の鉄板に囲まれていた。ここは、もうアマゾン川の上なのか?船は走り出してるのか?船が動いている気配も揺れも感じられなかった。窓を開けると、スーッと涼しい風がバッバッバッバッバと言う音と共に横切る。船は、動いているようだ。 カーゴのオヤジが船の中を案内してくれた。私達が運ばれた船は、大きな艀にコンテナとトラックなど15台程乗せたものを縦に2つ並べ、それを小さな船がうんしょ、うんしょと押してアマゾン川をものすごい速度で滑る様に走っていた。マナウスの港の景色はどこにも無く、海の様に広い遠くの両岸は緑のジャングルが小さく見えた。 ピピピー突然の笛の音。はて?なんでしょね。ボーっとしているとカーゴのオヤジがやってきて手を口の前で仰ぐ様にして「ご飯だ」とジェスチャーする。え?ご飯ついてないんじゃなかったの?そう思いながら台所へ向かうと小柄ながらにも大きなオバさんが「速くお食べ」とばかりに背中を押し、皿を持たせる。テーブルを見るとステーキに鳥の煮込みなど朝から豪勢な食事。つい、貧乏心が出てしまい、食べきれないほど皿に盛ってしまったのを見て笑うオバさん。「たくさんお食べ」と言わんばかりにうんうんとうなずいていた。 食べ終わった皿を洗っていると、壁の張り紙を見ていたうめちんが「ねえ、kちん。もしかしてお金取られるかも?」「へ?なんで?ご飯食べたから?」「うん、ここにセルビシオ45ヘアル(約2250円)って書いてあるんだよ」「え?でも船代じゃないのそれって・・・」「いや、なんかねぇ、船のお金を払う時にガイドのオヤジにさぁ言われたんだけど、船の中で出されたご飯は食べるなって・・・」「え・・・そんな、そこに書いてあるお金払ったらこの船に安く乗った意味ないじゃん。なんで、もっと早く言わないのさ」「まあ、もうご飯食べちゃったし、払えって言われたら払うしかないから、ちゃんとご飯食べよう」そうだね・・・ 船の中にあるシャワーを捻ると茶色い水が出てくる。もちろんトイレの水も茶色い。じゃあ、台所は?蛇口を捻ると一見透明な水。でも、コップに汲めば、やっぱり茶色い。それは、洗面所の水を捻っても同じ事。そして、当たり前の様だがアマゾン川の水はシャワーやトイレやすべての蛇口から出る水と同じ茶色だった。 コンテナとコンテナの隙間を歩いて、艀の一番前に行ってみる。一番前のコンテナに差しかかると吸い込まれるような感覚と共に目の前にパーっと茶色の水面が現われた。あまりにも静かな水面とあまりにも静かに走るこの艀に驚く。ココは、船のエンジン音も届かない。聞こえるのは、風が吹きぬける音だけだった。いつしかアマゾンに夕陽が落ちる。オレンジ色の太陽に照らし出されてなんともいえない空の色が広がる。そして、闇。すっかり暗くなったアマゾンに、大きな月が顔を出す。月明かりがアマゾンをすべてのものを照らし出す。ハンモック客船もいいけど、こんな艀の旅なんて普通じゃ出来ないねぇ・・・なんて思いながら、いつまでも、いつまでも、変わりゆくアマゾンを眺めていた。 |
2000.7.13(水) |