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ネパールの乾物や保存食
ネパール人はネパール料理が大好物です。最近では、日本で働くネパール人が増えていますが、彼らにどんな料理を懐かしく思い出すのか?という話を聞いてみると、国民食ダルバートタルカリの他に、マショウラやグンドゥルックを使ったネパール独特の乾物料理を食べたいという人も多いようです。
外国暮らしが長い日本人にとっても、外国ではなかなか手に入りにくいひじきや切り干し大根、高野豆腐といった乾物を無性に食べたくなるのと同じ感覚ですね。 乾物は、その国の風土も影響して、お国独特の風味ある食材なので、これが懐かしい味になる、というのがわかる気がしますね。
ネパールは、100以上の民族が共存しています。
東西、横長に広がった国土には、それぞれの民族が地域ごとに、異なった習慣と文化を持って暮らしています。
民族それぞれが、暮らしの中から生み出した、自然の恵みをふんだんに取り込んだ乾物や保存食は、食材を無駄なく使う知恵や、食糧難を見据えた準備だったり、同じ食材を違う美味しさで味わう方法だったりと、いろんな工夫が盛り込まれています。
ジンブー
ジンブーはネギ科の植物を乾燥させたものです。ネパール人はジンブール。インド人はジンブーと呼んでいますね。
よく使う使い方は、ダルスープの風味付けに。ムスタン地方では、野菜・漬物・肉などの味つけに使われています。
調理すると、香ばしい独特の香りで、美味しさを引きたててくれます。
ネパールでは市場の量り売りで購入したり、スーパーマーケットでも小袋入りで購入できます。
ジンブーの使い方(ダルスープ)
ネパールのダルスープは、いろいろなダルを使ってスープを作りますが、ジンブーは、どんなダルスープに入れても相性良く美味しくなります。ダールスープの上澄みに浮かんでいる黒い葉がジンブーです。
●使い方
よく温めた鍋に油を入れて、そこへ、フェネグリークとジンブーを少々入れて、
焦げる寸前まで焦がして、出来たダルスープの中に入れます。
使う量は、風味付けなので、ほんのひとつまみで大丈夫です。
スパイスを焦げる寸前まで焦がすというのはネパール料理の特徴で、これがインド料理になるとまた違うようですね。
ジンブーを入れないダルは、わさび無しの寿司のような、どこか一味ものたりない感じです。
ジンブーを加えると、ダル独特のクセが緩和されて食べやすくなる、ということもあります。
ネパール料理を作るのならジンブーはキッチンに常備しておきたい食材のひとつですね。
シスノ
シスノは野草の一種です。植物の背丈が高くトゲのある植物です。日本ではセイヨウイラクサ(ネトル)と呼ばれています。
市販のシスノは粉末状になっていて、料理に使いやすいようにパックされたものが売っています。
またシスノの繊維から糸を紡いで、生地や帽子・衣類なども商品として流通しています。
シスノは高山に多く映えていますが、カトマンズ郊外でも雑草の中に紛れて生えているのを見かけることが出来ます。
子供たちが間違ってシスノを手で触って泣いて帰って来るなんてこともあって、ネパールの子供たちでも良く知っている「あのトゲトゲのやつ」というお馴染みの野草です。
粉末のシスノは、どんな風に使うの?
現地のネパール人に聞いてみると、黒ダルスープ(ウラドダル)に混ぜて食べたり、お湯に煎じて飲んだりするそうです。
※スープに使用する際は、1回分のスープでスプーン1杯強くらい加えます。
●シスノの効能
高血圧、低血圧を抑える効果があります。
利尿作用によるむくみ解消、消炎効果があります。
花粉症や、アレルギー性体質の方に効果的と言われています。
グンドゥルック
グンドゥルックは、青菜を無塩発酵させて作った保存食です。酸味のある乾燥葉物で、使う時は水に戻してから料理をします。
冬場は、畑に伸び放題の葉物が,たくさん収穫できるので、生で食べきれない葉物は、
天日干しして保存用としてグンドゥルックを作ったりしています。
グンドゥルックの作り方
1:青菜を水で洗って、天日干しします。(高菜、カブ葉、大根葉、菜種葉など)2:乾いた青菜を、スパイスグラインダーに小分けに入れて、叩いてかるく潰します。
3:ぬるま湯を入れたボール器に、青菜を入れて、さらっと湯がきます。
4:青菜をタッパーに詰めこみます。(ギュー詰めにする、または重石をします)
5:タッパーに入った青菜を日に当て発酵させます。黄色い汁が上澄みに出てきたら発酵した合図。(2週間くらい)
6:発酵のあと、タッパーから青菜を出して、日に当てます。(3日くらい)
グンドゥルックとジャガイモのタルカリ
●材料グンドゥルック 1カップくらい
大豆 カップ1/2
じゃがいも 1個
トマト 1個
玉ねぎ 1個
ニンニク 1片
ショウガ 1片
塩 大さじ1
油 大さじ1
ターメリック 小さじ1/2
クミンシード 小さじ1/2
コリアンダー 少々
チリパウダー 適じ
フェネグリーク 少々
●作り方
1:じゃがいも、トマト、玉ねぎは、カットし、にんにく、しょうがは擦っておきます。
2:グンドゥルックは水に浸しておきます。
3:鍋に油を入れて温め、そこへ大豆を炒って、取出しておきます。
4:3に油を少々加えて、フェネグリーク、ターメリック、クミンシードを入れて炒めます。
5:4に玉ねぎを入れて炒め、次にコリアンダー、塩、チリパウダーを入れて炒めます。
6:5にトマトを入れて炒め、次にグンドゥルック、大豆を炒れて炒めます。
7:6に水を加えて煮込んで出来上がりです。
マショウラ
マショウラは、ダルを加工して作ったネパールの保存食です。食料不足に備えて、晴れた日に天日干しして作る乾物です。
いろいろなダルに、野菜(ジャガイモ、山芋、里芋、冬瓜や大根など)を混ぜて作ります。
ウラドダルと山芋、にんにくで作ったマショウラは、香りがツーンとして酸味があるのが特徴です。
お麩のようで、日本の煮物にも合いそうなマショウラは、クセが無いので食べやすいです。
ネパールの食べる花コイララとウラドダルで作った珍しいマショウラもあります。
肉を食べない習慣の人にとっては、マショウラを少し濃いめに味付けして肉の代わりとして料理に使ったりしています。
マショウラの作り方(ウラドダル)
1:ウラドダルを3時間くらい水につけます。2:水を切ったダルをミキサーにかけペースト状にします。
3:好みの野菜をすって、ペースト状にしたダルに混ぜます。
4:混ぜた具材を、一口大に丸めます。
5:丸めたマショウラを3,4日、天日干しして乾燥させて出来上がりです。
マショウラのタルカリ
●材料マショウラ
玉ねぎ 1個
ショウガ 1片
ジャガイモ 1個
トマト 2個
ターメリック 少々
クミン 少々
フェネグリーク 少々
アズワン 少々
ティンブール 少々
赤唐辛子 少々
油 大さじ2
塩 小さじ1
●作り方
1:マショウラは水に浸して10分置きます。
2:鍋を温め油を入れて、ターメリック、クミン、フェネグリーク、アズワンを炒めます。
3:マショウラの水を切って、2へ入れて炒めます。
4:3に玉ねぎ、ショウガ、赤唐辛子、ティンブールを入れて炒めます。
5:4にトマト、ジャガイモ、塩を入れて炒めます。
6:5に水を加え10分ほど煮て出来上がりです。
チュウラ(チウラ)
チュウラは、タイチン米を蒸して平たく潰し、乾燥させたものです。タイチンというのは米の種類で、ネパールでよく食べられている米に比べると日本米に近いベトベトした粘り気があり、米粒も丸くてふっくらとしているのが特徴です。
チュウラの種類は、タイチン米の産地によって名称が違います。
ポカラ、ナラヤンガート産のチュウラはネパールタイチンチュウラ。歯触りは固めです。
カトマンズ盆地産のチュウラはネワールタイチンチュウラ。名称通りネワール人の好むチュウラです。歯触りは柔らかめです。
インドに近いタライ地方産のチュウラはマデシチュウラと呼ばれています。
ネパールカジャ(ネパールのおやつ)に、濃い目の味のおかずと一緒に食べます。
農作業の休憩にそのままでも食べられるチュウラは、携帯食としても、とても便利な食材です。
チュウラの味は米そのものの味で、味のないせんべいのような感じですね。
チュウラに醤油や塩、七味唐辛子などをふりかけてフライパンで乾煎りすると、
おせんべい感覚のスナックが出来上がります。
ネパールで、チュウラの食べ方
タルカリ(野菜のカレー炒め)をかけて食べたり、ヨーグルトをかけて食べたり、ダルモートを混ぜて食べたり、目玉焼きをのっけて食べたり、アチャールを混ぜながら食べたり、と、淡白なチュウラの味には、いろんな料理が相性よく合います。ラプシ
ラプシは、ウルシ科の植物の一種です。日本ではチャンチンモドキとよばれています。
直径2センチくらいの薄みどり色の果実で、酸っぱくて、ビタミンCたっぷりです。
ラプシはアチャールにして食べたりティトウラというお菓子に使ったりします。
ティトウラは、ラプシや、マンゴー・パイナップル・レモンなどを、唐辛子やスパイス、塩、砂糖で和えた甘辛い食べ物です。
塩昆布や梅干しやドライフルーツのような感じで、甘味と塩味・辛味がギュッと濃縮した食べ物です。
ラプシコアチャールの作り方
●材料ラㇷ゚シ 300g
油 大さじ1
クミンシード 少々
フェネグリーク 少々
ターメリック 小さじ1/2
塩 小さじ1
赤唐辛子 2本
砂糖 大さじ4
●作り方
1:鍋にお湯を沸かし、洗ったラプシをいれて煮ます。
2:煮たラプシを湯から取り出して、しばらく置いてから皮をむきます。煮汁はあとで加えるので別に取って置きます。
3:鍋に油を入れて温め、そこへクミンシード、フェンネル、フェネグリーク、ターメリックを入れて炒めます。
4:3に皮をむいたラプシを入れて炒め、塩、赤唐辛子を入れて炒めます。
5:4に砂糖、煮汁を入れて炒めます。
6:5を火から下して冷ましてから、瓶にうつして出来上がりです。
ティンブール
ティンブール(ティムール、ティムる)はネパールの山椒です。アチャールに使ったり、肉料理・魚料理に使うと、一味違った隠し味として活きてきます。
インド料理ではあまり使われることがないスパイスです。
ネパールっぽい味の決め手がティンブールであるといっても過言ではないかもしれません。
頭痛+風邪気味の時の煎じ茶の作り方
予防薬としても使ったりします。ジンブール、ターメリック、ショウガ、シレヌン塩(岩塩)、ティンブール、各少々を、お湯に煎じて
温かいうちに飲みます。
体温調節が出来て、痛みが緩和します。
スクティ(干物)
鶏肉、豚肉、水牛肉、マトンなど肉を干したものはマス・スクティ、魚を干したものはマチャ・スクティです。高山に住んでいる少数民族の保存食だったり、盆地内でも、肉をさばいた時に、捨てるところなく肉を使いきるために、乾物としてスクティを作ります。
どんな肉でもスクティになります。
魚のスクティは川魚を干して作ります(ネパールは内陸国なので海がないのです)。
庭先で天日干ししたり、ガスコンロやかまどの上につるして煙で燻製にしながら、乾燥させてじっくり作ります。
昔のキッチンには、かまどが必ずあったので、スクティを作るにはピッタリの環境が各家庭にありました。
最近でも、郊外や村ではガスコンロとかまどを併用しながら使っている家もあるようです。
かまどならではの使い勝手や良さがありますからね。
スクティの使い方食べ方は、そのまま塩コショウしてあぶって、酒のつまみにしたり、
カブや大根、カボチャなどと一緒にスクティを少し混ぜてカレーを作ったりします。
ローカル酒場に行くとおつまみとしてもよく出てきます。
タマ
タマは、タケノコを湯がいてターメリックを混ぜ、タッパーに入れ天日干しして発酵させた保存食材です。ジャガイモ(アル)やインゲン豆(ボリ)と一緒に煮て、カレーにしたりします。
タマとじゃがいものカレーはアルタマ。
発酵食品ならではの酸味と旨味があってクセのある香りが特徴で、ネパール料理の中でも個性のある料理です。
アルタマを料理していると、キッチンから独特の香りがして来て、あっアルタマだなって、すぐわかりますね。
ネワール族のボウズ(パーティー)には、アルタマは定番料理として出てきます。
ネパールの風土から作られた独特の食材は、はじめて食べたのに、どこか懐かしく感じる美味しさがあります。
乾物や保存食は、じっくりとゆっくりと造り上げた時間も、美味しさのひとつになっているようですね。
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