「天竺」目指して夫婦モバイル放浪

 
 

 

k日記ペルー編2

2000.4.18(火)

 ウルバンバ渓谷への道をバスは、ドンドン登って行く。ウルバンバ渓谷へ行くのはこれで二度目だった。遥か眼下には、クスコの茶色い街並みが広がり青い空とのコントラストが美しい。心和む風景にため息が漏れる。これから起こる恐怖の行為に心の不安は消えなかった。「大丈夫だよ。きっと楽しいから」こんな友達の声なんか聞こえようもない。そんな私をよそにバスは軽快に走って行く。

 ウルバンバの町を過ぎ、オリャイタイタンボ近くの川辺リでバスは停まった。「Tシャツと短パン、水着が一番いいかな。それにサンダル。なければ裸足で良いです。ここで着替えてください。それと、何も持たないでくれ」とガイドの言葉に皆、着替え始まる。そして、不安と緊張が心にますます押し寄せ無口になる。黙々と着替え重い足取りでバスを降りる・・・菜の花が咲き乱れ、ホカホカと暖かい陽射しが差している。川も以前より水量が減り、川幅も小さくなっているように見える。あれだったら、大丈夫かな?呆然と川を眺め立ち尽くす。

 不意に「おおーーぃ。こっちに集まってくれ」マッチョのガイドが手を振っている。ますます重い足取りの私を軽い足取りのうめちんが引っ張って行く。やけにうれしそうな顔のうめちん・・・何がうれしいんだか分からない。線路を越え、川岸へ下りていくと、マッチョのガイド傍らに青いゴムのボートが1艘出来ていた。そして、手際よく赤いヘルメットとゴアテックスらしきたぶん防水だろうと思われるぼろぼろの上着にライフジャケットをみんなに配っていた。私達も受け取り、そして、装着。最後にオールを一人1本、手渡される。「これで良いかしら?」何度も何度も点検。不安が消えない私は、装備チェックに余念がない。

 青いゴムボートに腰を降ろした、マッチョのガイドはゆっくりと英語で説明を始めた。「始めまして・・・」から始まり、オールの持ち方から落ちたときの対応まで細かく説明してくれた。本当にこんなんで大丈夫か?まだ、不安ではある。が、ここまで来たからには乗るしかないと腹をくくる。

 14人を7人ずつ、二つのボートに割り振られガイドを入れて8人でボートに乗ることに。「向こうのボート、シューシュー音がしてますよ。どっかから空気が漏れてますよ。こっちのボートでよかったですね」まったくだ、そう思った。8人でボートを持ち上げ川に降ろす。結構な重量がある。そして、先頭にヨギーと外人男性、その後ろに外人女性と大阪少年たけし君、その後ろに坊主のスーちゃんとうめちんが来て、最後に私とガイドが割り振られボートに乗りこむ。ゆっくりと岸から離れ、雄大に流れるウルバンバ川に漕ぎ出す一艘のゴムボート。私の不安をよそにラフティングが始まった。

 ゴムボートは、ゆっくりと流されて行く。緩やかな流れの中で手始めに練習。前に進んだり、後ろに進んだり、そして右に旋回、左に旋回などしているうちに前方に白いうねりが見えて来た。第一の試練登場。

 「漕いで、漕いで、漕いで!!ストーっプ!!」オールを膝に置き、試練に突っ込んで行く。目の前にいた友達がふいっと消えた瞬間に白いしぶきを上げた、ウルバンバの川が襲ってきた。ウワーー一瞬ひるんだ隙にお尻がつるんと滑って、体勢が崩れた。一生懸命ボートのへりにしがみつく。パニックかと思いきや「オールを放しちゃいけない!!」と結構、冷静な自分がそこにいた。そして、何事もなかったようにゆっくりとした流れに戻るウルバンバ川・・・うぬぬ、侮れない。

 先ほどまで、あんなに良い天気だったのに雲が空を被っていた。不意に吹く風が濡れた体に寒さを与える。両岸には、牛がのんびり草を食み、釣りを楽しむ家族が手を振る。のどかな風景の前に現われたのは、恐怖の風景だった。前を行くゴムボートが忽然と姿を消したのだ。「彼らは、左のコースだから。僕らは、右のコースね」??右のコースは、そんなに恐くないって事?そうこう思いながら激流に突進。1つ目の滝は、難なくクリアーしたと思ったら目の前に大きな岩が現われ、行く手を阻まれた。「左に旋回!!」ガイドの号令に必死に漕ぎまくる。そのまま、まっさかさまに川に落ちる。水が容赦なくボートを飲み込み、私達をも飲み込んでいく。まだまだ、激流が続く中、私の目の前に座っていたスーちゃんは、どこへともなく消えていた。必死に漕ぐぎながら後ろをチラッと見ると、赤いヘルメットが激流の中にチラッと見えた。あわわあわ、落ちたんだ!!そう思っても、なすすべがない。

 第二の試練を突破し、緩やかな流れになった。どんぶらこっこと流れるスーちゃんを無事救助した。幸い、ロープを掴んだ時、手にけがをしただけにとどまった。何度となくラフティングをやったことがあるスーちゃんは、ちょっと興奮気味で「ああ、面白かった」と答えた。うむむーー私だったらパニクッてただろう。

 第三の試練は、難なくクリアー。これで、おしまいかぁ・・・なんて思い始めていた私に自分でびっくりしてしまう。無事、川から上がったときには、少しの疲労感と満足感がそこにあった。はじめの不安はどこへやら。ご飯を食べてお腹が脹れると、どっと疲れが襲ってきた。バスに乗り、椅子に深く腰を掛けるとそのまま記憶が遠のいた。気がついたら、クスコに戻ってきていた。

 ああ、無事に帰って来れてよかった・・・ホッと肩を撫で下ろす。

 
2000.4.17(月)