「天竺」目指して夫婦モバイル放浪

 
 

 

k日記インド編

2001.3.24(土)

 ムンバイまでいっしょだった、雀士が私達を尋ねて久美子ハウスにやってきた。ゴアの強力な重力から逃れて、3日前にようやくバラナシにたどりついたらしい。涼しげな上下を着た彼は、なぜか毛皮の帽子をかぶっていた。会って一番に「なに、その暑苦しい帽子は?」「いやぁ、こっちは寒いんで・・・」と毛皮の帽子をパッととるとつるつるのお月様が顔を出した。ツルピカまでは行かないが禿げていた。まるで坊さんのようになっていた彼を見て呆然とする二人。詳しい訳は聞かなかったが、どうやらゴアは楽しく、相当、暑かったらしい。

 3人でお決まりのボートに乗りに行く。最近、しょっちゅうボートを借りにくるので顔を覚えられてしまったらしい。うめちんの運転で沖へ漕ぎ出す。雀士の要望で対岸へ。先日同様、岸に引っかかった死体はそのまま放置されていた。金色に包まれた遺体を近くで見ていたが、もう一体の手足無死体に勢い勇んで走っていった雀士。匂いに一瞬ひるんだのか遠巻きに見ていたようだった。「こちら側って、ほんとにあの世だね・・・」ぽつんと言った。

 運転を雀士に代わるが、くるくる回るばっかりで先に進まない。私も何度か漕いで見たが、左右の力加減が非常に難しいのを知っている。同じ力で漕いでもまっすぐには進まず、左だけ漕いで、右力入れないで漕いで・・・と調節しなければいけない。結局、選手交代。火葬場に行こうと漕ぎ始めるが、オールを支えているロープの調子が悪く、オールがすぐ外れてしまう。終いに、ぶちっと無情にも切れてしまった。その切れたロープで小さい輪を作り、何とか無事の生還を果たす。帰ってこれてよかった。陸に足をつけてほっと安堵する。

 薄闇が迫り、ガンガーに灯篭がともる。祈りの鐘が辺りに響き渡る。ムンバイで別れてから、心配してたんだよ。もう、二度と雀士に会えないような気がしてたから・・・会いに来てくれてありがとう。また、遊ぼうね。

2001.3.23(金)