「天竺」目指して夫婦モバイル放浪

 
 

 

k日記インド編

2001.3.16(金)

 タブラを習おうと思った。タブラとは、タブラと言う小さな太鼓とバヤンと言うタブラよりちょっと大きめの2種類の太鼓を両手を駆使して数種類の音を出すもので、インドの古典音楽には欠かせない打楽器だ。日本を出る前は、バラナシに来たらすぐ習おうと意気込んでいた。うめちんと知り合った頃から、タブラの魅力に引き付けられていた。有名なタブラ叩きが、タブラをたたきながら「ダ−、ディンディン・・・」とリズムを叫ぶ、そんなことをすごくやってみたかった。でも、いざインドに来てみると私は、少し怖気付いていた。本当に私にできるのだろうか?いや、あんなのできっこないよ。だって、すごく難しそうだもの・・・ガンガーを見ながら自問自答を繰り返す。そのちゃんがシャントゥールの先生と言葉のことで意思の疎通がうまく行かないと嘆いていた。そんなことも不安だった。そんな私の気持ちを知ってか知らずか、私にタブラを習って欲しいシタール弾きのうめちんは、執拗に私を先生の元に連れて行こうとする。シタールにはタブラ弾きがいると都合がいいし、シタール弾きは、タブラの知識もなければいけない。俺がシタールの練習をしている時、kが一人暇になってしまうだろう?と彼の言うこともわかるが、私は、不安なのだ。そんな感じで、どうも腰が上がらない。今まで、あれやこれやと都合をつけて拒んでいた。

 でも、勇気を振り絞って先生の元へ行ってみることにした。言葉の事を話すと、うめちんが言葉のフォローをしてくれると言ってくれた。昼前に先生の家の門をたたく。ちょうど、同じ宿のフランス人がレッスンを受けていた。聞いていけと言うので、中で待つことに。フランス人が去った後、先生がタブラを出してきた。そして、チューニングを軽くした後、カーンと弾き始まった。軽くリズミカルに音と共に指が動く。目を奪われる。一通りたたき終わったのか、私にタブラを押してよこした。そして、突然、叩き方を教え始まった。必死で叩くが、そんな簡単に音は出なかった。「どうだ、楽しいか?」楽しいとは言いがたいが、なんとなく意地になっていた。「習うのだったら、タブラだけ買ってくれ。バヤンは私のを貸してあげるから、帰るときに買えばいい。どうする?いつ楽器屋に行く?」早ければ早いほどいいのだが、それに買うならセットで欲しいと言うと、すぐ出かけようと、支度をしてきた先生。なんだか、わくわくしているようだった。

 リクシャに乗ってしばらく走る。リクシャを降りて初めて見る小道を入る。びっしりと並んだ商店街の一角に店先に太鼓をつるした太鼓工房が数件現れた。皮を削ったり、太鼓の側に鑢をかけたりしながら、私たちを奇異の目で見ている。この辺には、ツーリストなんてこないのだろう。一軒の家に入っていった先生。その後を追いかける。暗い土間には、階段が見えた。その急な階段を登ると、パッと目の前が開けてたくさんの太鼓が目に入った。そこには、まだ出来ていないものから完成したものまでいろいろな種類の太鼓がびっしり並んでいた。でっぷりした店主が、太鼓を数個出してきて、先生の前に差し出す。カーンと叩いて音をチェックする。女の子にはちょっと小さなタブラがいいと少し叩く面が小さいものを選んでくれた。「新しい太鼓だぞ。おまえの太鼓だぞ」私よりうれしそうな先生。「明日、またおいで」そして、私は、タブラを習うことになった。

2001.3.15(木)