「天竺」目指して夫婦モバイル放浪

 
 

 

k日記チリ編

2000.2.9(水)

 荷物を受け取りにフェデックスのカウンターに向った。荷物来てますか?とニコニコ顔のうめちん。「荷物番号は?」と聞かれさっと血の気が引いたうめちん。そして「番号が分からないと何も出来ないわ。でも、あなたの名前の荷物はここには来てないわよ」と言われ、血管が切れそうなほど怒り狂っているうめちん。ぜんぜん違う顔だったが、どれもこれも同一人物である。フェデックスが使うブローカーのパブロ君に電話して聞いてみると「ごめん、ごめん、荷物はビーニャに行っちゃった」とあっけらかんと言われ、地下鉄代もばかにならないのに、サンチャゴでは荷物を受け取れず、怒り狂ううめちん。

 頼んでおいためがねが今日受け取れるので、その足でメガネ屋に向った。メガネ屋に顔を出すと、いつものおばさんが出てきて「あら、どうしたの?また何かあったの?」と変な事を言う。「変なこと言わないでヨ。今日、メガネできてるでしょう?早くちょうだい」と交換書を差し出すと「なに言ってるのよ、めがねは明日出来てくるのよ」はぁ?何いってんのこの人は、だって水曜日に出来るって自分で言ったじゃないですか。今日は、水曜日だよと交換書を見ると確かに10日と書いてある。「今日は、10日の水曜日でしょ、これ以上待てないよ。今日、移動するんでバスのチケットも買っちゃったし」とバスチケットなんて買ってないのに脅しのつもりで言うと、カウンターの奥から三角カレンダーを取り出して私達の目の前に突き出し「今日は、9日の水曜日よ」とちょっと怒り気味。でも、いいように対処してくれた。工場に急がせて作らせるから5時過ぎに来てくれといろいろ手を尽くしてくれた。うそついて申し訳ないと思いつつも、感謝してまた来ることにする。

 うだうだした時間が流れる。郵便局から荷物を出そうとしたが、船便で6kg40ドルと言う値段にうめちんは、ケチケチレジスターが働いたらしく「オモイケド、コレハボクガショッテイクヨ。ダイジョウブ、シンパイシナイデ」と機械的に言った。

 友達が「何処かで合流したいんだけど」と言うメールを貰っていたので電話してみることに。でも、国際電話は高いよねぇと考えていると、またまたケチケチレジスターが働いたらしく「ソウダ、インターネットフォンデカケレバイイヨ。スゴクヤスイカラ」とインターネットフォンが出来るカフェに一直線に歩き出した。 5時過ぎにメガネ屋に行くと「まだこないから、もうちょっとまっててくれる?」とやっぱりと思うようなことを言われる。

 40分経過。まだこない。今日はビーニャに行けないかなぁと思い出す。

 1時間経過。メガネ屋の店先で眠りこけていたら肩を叩かれた。「来たわよぉ」とメガネを渡された。「本当にありがとう」と言ってすごく急いでる風に小走りに店を出る。急いでホテルに戻るとフロントのソファーでうめちんが眠りこけていた。ゆすり起して荷物をまとめて、バスのターミナルに急ぎ安いチケットを探しにうめちんが走る。そして、息せき切って帰ってきたかと思うと私を急き立て荷物を背負わせる。「もう、出るから早くーー」荷物を引っ手繰るようにしてバスの荷物室にほおり、私達を急き立てバスに押しこめドアがしまるかしまらない内に走り出した。

 「俺さ、バカだと思ったよ」とバスが走り出してまもなく言った。なんで?と聞くと「さっき、安いチケットを探してる時さ、4件位聞いて廻たんだけどさぁ、みんな2000ペソって言うんだよ。だから、一番早く出るこの会社のチケット買ったんだけどさ、チケット貰ってお金払うとき、チラッと横のブース見たら『ビーニャデルマル、オフェルタ1500ペソ!!』って書いてあるんだよ。で、で、出したお金を引っ込めようと思ったんだけどチケット貰っちゃったしさ、バス待っててくれるって言うし・・・もういいやって思ったら、俺ってバカだなぁって噴き出しちゃったんだよ」とケチケチレジスターが壊れたようだった。西陽が私達をギラギラと照らす。容赦なく真正面からやってくる。ハイウエイを西に走る。陽に照らされ金色に輝く草原が続く。草原が山に変わったときトンネルがポッカリと口を開けて私達を飲みこんだと同時に等間隔のオレンジ灯が目に飛び込む。暗闇を出た時、空は薄いオレンジ色と化していた。山々がなんとも言えない色に染まっていた。そして、何処までも整然と並ぶワインブドウの緑に目を奪われた。

 辺りが薄暗くなった頃、ハイウエイのカーブを曲がると目の前に深い青の海が現われ、その向こうにビーニャの街の明かりがキラキラ輝いていた。 ビーニャ・デルマルの駅前でバスを降り、宿に向うコレクティーボを探す。線路脇をうろうろしながら車の頭についた看板を見て、手を振るがなかなか止まってくれない。ここじゃ拾えないのか?と思っているとおばさんが突然「どこいくの?」と声をかけてきた。そして、こっちよと重い荷物を持ってさんざん引きまわされた挙句、始めの線路脇で拾えることが発覚。おばさんが負いかけてくるにもかかわらずずんずん歩って戻ってきて、首尾よく荷物が乗せられるコレクティーボを捕まえられた。一体、何だったんだろう、あのおばさん?今考えると悪いおばさんだったのでは、と思えてならない。最近、チリの安全な雰囲気で気が緩んでいるから気を付けねばと気を引き締める。

 ここだと降ろされた所は、高級そうな家が立ち並ぶ住宅街だった。目の前に破壊の限りを尽くされた廃屋が見えた。「ええーと汐見荘って何処だろう」とあちこち見て見るが何処も当てはまる番地がない。ただ、廃屋に書かれた番号は、汐見荘の番地とぴったり当てはまった。「ねえ、これ汐見荘かなぁ」不安に狩られながら目に入ったブザーを押して見る。シーン・・・誰も出てこない。ここ汐見荘じゃないんじゃない?とか、もしかして汐見荘つぶれちゃったとか?何処かに移動したとか?不安が二人の頭を駆け巡る。何処かで電話しようと、ガイドを取り出した瞬間、ガチャとドアが開いた。そして、無事、汐見荘に到着。暖かく向えてくれました。

 ああ、長い一日だった。

 
2000.2.8(火)