「天竺」目指して夫婦モバイル放浪

 
 

 

k日記チリ編

2000.1.19(水)

 感動を与えてくれたGlaciarGreyを後にし、来た道をLagoPehoeに戻る。風に押されて走るように歩くが、これもなかなか疲れる。行きと違ってそんなに風が強くなかったので、昨日ゆっくりと見れなかった深い森や氷河を堪能しながらのんびりと歩けた。

 LagoPehoeにつく頃には、後ろから追いかけてきた雨雲がGlaciarGreyまでの道を覆っていた。しばらくするとLagoPehoe周辺もすっぽり雨雲に覆われて、ぽつぽつと雨が降ってきた。今日は、LagoPehoeから3時間ほど南に下ったフリーキャンプサイトCampamentoLosCarretasまで行こうと思っていたが、どうも雨が止む気配がしないので考えてしまった。次第に雨脚は強くなる。南の方も雨が降っているようだった。

 なんとなくもうイイかなと言う気になってくる。GlaciarGreyも見れたし、さんざん歩いたし、もう体も限界だし・・・風前のともし火のような考えが頭を駆け巡る。そして出てきた答えは、RefugioLagoPehoeから船に乗って、下界に帰ろうだった。ダメなトレッカーが奈落のそこに穴を掘ったような感じだが、雨に濡れて風邪を引くよりはマシだと思った。

 Refugioの外は、強い風と冷たい雨が降ってた。暖かいRefugioの中には、船を待つ大勢の人が暖かい飲み物を飲みくつろいでいた。暖かくなるといろんな臭いがするもので、靴を脱いで入るRefugioはコーヒーのイイ匂いと共に異様な足の臭いも立ちこめていた。「みんな臭いから俺のそんなに気になんないなぁ」などとうめちんは、うれしそうに笑っていた。書く言う私も相当臭かったので、黙って下を向いていた。

 夕方6時発だと言う船は、6時になってもやってこなかった。風と雨が吹きすさぶ桟橋でしばらく待っていたが、耐えきれずまたRefugioに避難した。「遠くに船が見えてから向った方が頭イイって」と半の人がRefugioに避難してきていた。が、桟橋で忍耐強く待っている人もたくさんいた。

 30分くらい待ったろうか?遠くの湖面に船が見えた。ものすごい勢いでこちらに向ってくる。急いで桟橋に向い、順番を待って乗りこむ。うめちん曰く「これって、双胴船って言うんだよ」なんでも、すっごく速い船らしい。桟橋にいたトレッカーを急いで乗せると、音も無くするすると動き出し、方向転換したかと思うとものすごい勢いで湖面を走り出した。

 ああ、快適、快適。高いだけのことはある。ああ、イザと言うときのドル袋が役にたった。ドル払いOKじゃなかったらこの船には乗れず、いまごろ雨の中をひたすら歩いているところだった。そしてダメテントで一夜を過ごし、風邪をひいていたに違いない。ああ、本当によかった。そう、思えるだけでも高い金を出した価値があるよねと自分を納得させる。もっと雨が降ればもっと価値が上がるかな?なんて思うゲンキンな二人がそこにいた。そして、トレッキングは突然終わりを告げた。

 程なくGuarderiaLagoPehoeに到着。帰りのバスが、そこで待っていた。重い荷物から開放されバスに乗りこむと、知らぬ外人どもが「やあ、お帰り」と向えてくれた。なぜだか涙がでた。深くバスの椅子に座ると、心の底から安心した。辛くイロイロなことがあったが、美しく自然豊かでたくさんの感動を与えてくれたパイネともお別れだった。グアナコの群れが道端で見送ってくれた。遠く離れ行くパイネを見ながら「もう、来る事はないだろう」と思うとまた涙が出た。

 バスは疲れきった私達を乗せて、下界へと急ぐ。暖かい部屋とシャワーとベット、おいしいご飯を目指してひた走る。

 パイネよ、さようなら。そして、ありがとう。

 
2000.1.18(火)