「天竺」目指して夫婦モバイル放浪 |
||
k日記ブラジル編 2000.8.17(木) 曇り空から雨が降る。霞みがかった幻想的な山々。いつもは綺麗だと思うのだが、今日は違う。「どうして雨なんだー」と不て寝する猪飼さんをよそに「たぶん晴れるよ。コルコバードの丘で弁当食べようね」と弁当を作る私。そう、今日はリオ・デ・ジャネイロに行くのだ。でも、灰色の空は、一向に青空に変わる気配を見せなかった。 猪飼さん「俺、髭まで剃ってさっぱりしたのに、なんで、リオは股開いてくれないんだよ」 私「・・・それは、昨日シャワー浴びなかったからかもよ。汚いパンツはいてるんじゃだめだよ」 猪飼さん「分かりました、着替えればいいんでしょ」せっせと着替え始まる猪飼さん。これで晴れたら奇跡だな・・・なんて、出発。すると、奇跡が起こった。走るにつれて晴れ間がのぞき、太陽光線がピカーっと牛の中に照りつける。「晴れてるよ、晴れてるよ、奇跡だァー。俺がパンツ履き替えたからだよ!!」興奮する猪飼さん。 途中の街で、ヒッチハイカー二人を拾った。一人は、頭に「祭」と書いた鉢巻を巻いて「アリガトー」を連発しながら流暢な英語を話し、もう一人は、アクセサリーや置物を作って売っている人らしく、木の板や石板にブッタやオーンの文字を書いたものをたくさんもっていてしきりに私達に見せて来る仏教マニアだった。二人とも陽気なブラジリアンで、先ほどの街の山奥で2、3日遊んでいて、リオに帰る所だったらしい。英語が話せるせいか、歌を歌ったり、話しに花が咲く。そして「リオに行くんだったら、リオを案内してあげるよ。なんなら、家に泊っていかない?」そう申し出てくれた。ありがたく受けることにする。 リオに入る頃には、青空が広がり観光日和。しかも、案内がいるので街の中もスムーズに走れていい感じ。ツイテイルってこういうことかもしれないと思った。長い橋を渡ると、リオの街並みが見えてきた。デカイ、とにかくとても大きく見えた。「うーん、コルコバードは曇って見えないから、先にポン・ジ・アスーカルに行った方がイイかもね」そういうので、ポン・ジ・アスーカルに先に行く事にする。海ににょっと突き出た、ラクビーボール型の岩が見えてくる。よく見れば、ポチョッと小さな物が、行ったり来たりしているのが見える。近づくに連れてその大きさに圧倒された。「僕達は、行かないから、君達だけで、ゴンドラ乗っておいでよ」とブラジリアン。「君達は、どうするの?待ってってもらうのは悪いから、私達のことはかまわないでバスか何かで帰っていいよ」なんて、彼が泊めてくれると言った事を忘れて言ってしまったうめちん。「うめちん、タダ宿・・・」そう言った時にはすでにこと遅し「・・・じゃあ、そうするよ。気をつけて旅してくれよ」別れのあいさつして、次の車を見つけて去ってしまっていた。「あああーーータダやどがぁーー」悲嘆に暮れるうめちん。ゴンドラに乗っても、ポン・ジ・アスーカルの上からのすばらしいリオの眺めを見ていても、何かにかこつけて「タダやど・・・」後悔の影が付きまとう。 ポン・ジ・アスーカルの上から雲が掛かったコルコバードの丘が見えた。「お願いだから、晴れてくれ―」念仏の様につぶやく猪飼さんをよそに、たまに雲の切れ目から小さなキリスト像が姿を現す。「昨日、シャワー浴びなかったのは、謝ります。だから、晴れてくれー」そんな事もつぶやいていた。しばらく眺めていたが、曇りには変わりなく、サンサンと照りつける太陽が痛いほど肌に刺さるので、ポン・ジ・アスーカルから降りることにする。 あの状態のコルコバードでお弁当は無理だろうなぁ・・・そう思ったので、お弁当は、ポン・ジ・アスーカルを見ながら海辺で食べることにした。海からブワッと風が吹く。箸を止め、フト空を仰ぎ見る。みごとに澄んだ空、強い陽射。肌に痛いくらいの冷たい風が吹きぬける。冬なのだと思った。 「コルコバード、行ってみようか。車で登れるみたいだから、たぶん、行っても損ないよ」看板を便りに、コルコバードに向かう。トロッコ列車始発の駅を過ぎ、道なりに走ると石畳の細い路地に突き当たった。コルコバードの丘こっちの看板が見えたので、左折すると目の前に壁のような坂が現われた。一瞬戸惑う運転手うめちん。でも、「こんなの登るの?」誰もが疑問に思ったに違いない。意を決して、アクセルを踏み込む。ブオーーーーーボフンッ、ボォフン・・・坂の途中でエンスト。1速に入れているにもかかわらず容赦なく後ろに後退してしまう牛次郎。もう一度挑戦してみるが、結果は同じことだった。あきらめて、すごすごトロッコ駅まで戻り、不本意だが高い電車で登る事にする。 ゆっくりとゆっくりと急な坂を登るトロッコ電車。30分程で頂上に到着。電車を下り、階段を登ればそこはもう雲の上。下界は雲に阻まれ何も見えず。上を仰ぎ見ればキリスト像が両手を広げてそびえ立つ。これほどの大きな像なのに威圧的な感じがしない。薄雲が掛かれば幻想的に、夕陽を背にすれば、穏やかにやさしく見える。ここは、本当に神の領域なのか?と思わせるものがあった。ただ、呆然と見つめつづけた。 雲の合間からチラリと見えるリオの街に、ポツラポツラ明かりが灯る。闇の中に幾万の輝きが灯るころ、華やかなリオの街を後にする。 |
2000.8.16(水) |