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ネパールの空にたなびく信仰の旗
タルチョ チベットの5色の旗
澄んだ青空の中、風になびくタルチョ。
チベットやネパール、ラダックを旅した人には、心に残る風景のひとつでしょう。
5色の旗に書かれた経文や絵が、風の力を借りて天高く舞い上がる光景は、異国情緒のある心地よい風景です。
タルチョは、5色の旗に託された文字や絵が風になびくことで読経したことになるという、チベット仏教の信仰のひとつです。
チベット民族が居住するチベット高原はヒマラヤ山脈の北側にあり、平均した高度は4000m以上とも言われている地域です。
冬はマイナス20度にも下がるという厳しい自然環境に暮らしているチベット民族が、厳しい暮らしの中で生きると同時に信じる象徴として、いくつかの信仰形態があります。
そのひとつが、祈りや願いを自然の中の風に託したタルチョです。
チベット民族はこのタルチョを、家の屋根の上、寺院の屋根の上、山頂や峠、橋や水辺などに、魔除けと祈りの旗として掲げます。
時間とともに色あせて、ボロボロになったまま自然の中にとり残されたタルチョの風景。
新しく掲げられた色鮮やかなタルチョの風景や、真っ白な雪山に掲げられたタルチョの風景。
新年を迎えるために新調された寺院の屋根の上のタルチョなどなど、風になびくタルチョは、自然と信仰が結びついて、様々な場面で見られます。
タルチョは、自然の神とシャーマニズム信仰を特徴とする、ボン教時代の名残りの信仰形態のひとつです。
遥か昔、タルチョは、軍隊やチベット遊牧民が集団で移動する時の旗印・軍旗・勝利の旗として用いられていました。
それがチベットに仏教が伝来し、人々の信仰が高まっていく頃には、タルチョは、旗印や戦のためのものから仏教信仰のための象徴として使われるようになりました。
その旗の色やかたち、柄なども、次第に変化しつつ旗に対しての考え方も少しづつ変わったのです。
また、タルチョは祈祷旗として掲げることによって、悪霊をお祓いし、その土地の精霊に祈りを捧げるためにも使われるようになりました。
六字真言が刻まれた円筒形で、手に持てる小さいミニマニ車から、チベット寺院の壁面や寺院内に設けられている大きなマニ車まであります。
タルチョは掲げた旗が風になびくことで信仰となるというのと同じように、マニ車を時計回りにくるくる回し続けながら、マントラを唱えることで信仰となる、ということになります。
字の読めない人でも、このマニ車を回すことで、マントラを唱えたと同じ徳を得ることができるとも言われています。
チベット信仰の中では、同じようなマニ石と言われる、経文の描かれた石を積み上げる習慣や、数珠玉をひとつひとつ永遠に数えながらマントラを唱えるなどの信仰が見られます。
マニ石も、マニ車同様に時計回りに通るのがルールとなっています。
チベット高地に住むチベット人にとっては、鳥葬が最も一般的な葬儀のかたちとされています。
魂が抜けたあとの死体は抜け殻にすぎないという考えから、死んだあとの肉体はすべて鳥に捧げて食べさせるという信仰になります。
だだっ広い境内でずっしりと響く低い声でマントラを唱え続けている光景が見られるのはチベット寺院ならではです。
マントラには大きく分けて2つの意味があり、宗教的な儀礼や祈りとして経文を唱えるものと、瞑想への導きとしてのものがあります。
色はそれぞれ意味を持ちます。
青は天や空。白は風。赤は火。緑は水。黄色は地や土を現しています。
この、青、白、赤、緑、黄色の5色は、タルチョに限らず、チベット仏教寺院やチベット文化に関係する道具や仏具に使われている色でもあります。
チベット仏教徒のお宅に伺うと、室内のどこかに、この5色の布を使った飾り付けが設けられて見られます。
タルチョに描かれている絵柄は、ルンタの風の馬や、四神などが描かれて、経文として六字大明陀羅尼 が記されています。
仏教の呪文のひとつで、サンスクリットの6つの字音からなる陀羅尼です。
チベット語で六文字となることから六字真言(シックスシラブルマントラ)と言います。
この六字真言は、梵字の一語一語に意味を持っています。
特に、チベット仏教圏のチベット、モンゴルの仏教徒が盛んに唱えるマントラです。
ネパールのボダナートを訪れた方はご存知でしょうか?
寺院内に入ると、永遠とながれている音楽があります。
♪オム、マ、二、ぺ、メ、フム ♪オム、マ、二、ぺ、メ、フム♪と終わりなく続いて流れています。
オムマ二ぺメフム は、梵字デザインとしてアクセサリーに刻まれていたりTシャツのプリントでお馴染みの方も多いでしょう。
チベット仏教徒は、この六字真言の刻まれたネックレスやブレスレッド、数珠を身に付けることも信仰のひとつだと言います。
中国の神話に登場する、中国古来の守り神。天の四方を司る神獣です。方位の四神とも言われています。
タルチョには、方位を司る霊獣、青龍、白虎、朱雀、玄武、麒麟が描かれています。
四神のかたちとしての特徴は、
■青龍は、長い舌を出した龍のかたち
■白虎は、細長い体をした白い虎のかたち
■朱雀は、翼を広げた鳳凰のかたち
■玄武は、カメの甲に蛇が巻きついた形をした生き物のかたち
四神には、それぞれには、色、季節、方位などの意味付けがされています。
■青龍 緑、春、東
■白虎 赤、夏、西
■朱雀 白、秋、南
■玄武 黒、冬、北
■麒麟 黄色、中央
●タルチョの中央に描かれている馬を指して、ルンタと言う説。
●タルチョ自体の別名としてルンタと言う説。
●タルチョの掲げ方の違いによる説。
→旗を横長に掲げるとルンタ(橋の欄干に掲げられている様式)
→三角錐形に掲げるとタルチョ(寺院の塔頂から四方八方、屋根づたいに掲げられている様式)
また、タルチョ、ルンタ、マニ旗、タルチョクなどの呼び名もあります。
馬と言えば、日本のお正月に神社で絵馬に願い事を書く風習がありますが、古代日本の習わしによる祈願の対象としての馬も、似たような意味合いがありますね。
タルチョの絵や文字で表現された木版画は、機械による印刷ではなく、ひとつひとつ丁寧に作られた、チベット民族の手仕事によるものです。
山岳民族であるシェルパが中心となって、登頂前の儀式の一連を執り行います。
プザに使う仏具として、新品のタルチョを掲げ、登山の安全を祈ります。
その時には、タルチョの旗の上に、登山者それぞれの祈りや願いを文字で書き記す場合もあります。
チベット、インド、ネパール、パキスタン、ブータン、5つの国をまたぐ山々の山頂には、登山家たちの祈りや幸運を祈るタルチョが風に吹かれてなびいています。
その各寺院には5色のタルチョが掲げられていて、青空によく映える風景が見られます。
中でも有名な2つの目玉寺、ボダナートとスワヤンブナートには、風に吹かれてゆれるタルチョに魅かれて訪れる観光客が絶えません。
ボダナートは、絡み合うほどたくさん吊るされたタルチョと、白いストゥ―パ(塔)と、寺院内に流れるマントラ、僧、チベット料理、あらゆるチベットの文化がダイナミックに混じり合った、異国情緒のある観光名所です。
タルチョには、青い空と風がよく似合います。
風の通り抜ける道や、身近な空間にも、そんなタルチョを飾ってみてもいいですね。
チベットと同じ青空のもと、風になびいたタルチョのように、皆さんの祈りと願いが風に届きますように。
チベットやネパール、ラダックを旅した人には、心に残る風景のひとつでしょう。
5色の旗に書かれた経文や絵が、風の力を借りて天高く舞い上がる光景は、異国情緒のある心地よい風景です。
風が読経するタルチョ
タルチョは、5色の旗に託された文字や絵が風になびくことで読経したことになるという、チベット仏教の信仰のひとつです。
チベット民族が居住するチベット高原はヒマラヤ山脈の北側にあり、平均した高度は4000m以上とも言われている地域です。
冬はマイナス20度にも下がるという厳しい自然環境に暮らしているチベット民族が、厳しい暮らしの中で生きると同時に信じる象徴として、いくつかの信仰形態があります。
そのひとつが、祈りや願いを自然の中の風に託したタルチョです。
チベット民族はこのタルチョを、家の屋根の上、寺院の屋根の上、山頂や峠、橋や水辺などに、魔除けと祈りの旗として掲げます。
時間とともに色あせて、ボロボロになったまま自然の中にとり残されたタルチョの風景。
新しく掲げられた色鮮やかなタルチョの風景や、真っ白な雪山に掲げられたタルチョの風景。
新年を迎えるために新調された寺院の屋根の上のタルチョなどなど、風になびくタルチョは、自然と信仰が結びついて、様々な場面で見られます。
タルチョの起源は?
その歴史を遡ると、ボン教の時代になります。(ボン教とは、チベット仏教伝来以前の土着の宗教であり、古代から続いているチベット人独特の総合宗教です。)タルチョは、自然の神とシャーマニズム信仰を特徴とする、ボン教時代の名残りの信仰形態のひとつです。
遥か昔、タルチョは、軍隊やチベット遊牧民が集団で移動する時の旗印・軍旗・勝利の旗として用いられていました。
それがチベットに仏教が伝来し、人々の信仰が高まっていく頃には、タルチョは、旗印や戦のためのものから仏教信仰のための象徴として使われるようになりました。
その旗の色やかたち、柄なども、次第に変化しつつ旗に対しての考え方も少しづつ変わったのです。
また、タルチョは祈祷旗として掲げることによって、悪霊をお祓いし、その土地の精霊に祈りを捧げるためにも使われるようになりました。
チベット仏教の特徴
タルチョはチベット仏教信仰のひとつですが、タルチョの他にもチベット仏教の信仰形態として特徴あるものをいくつか紹介しておきましょう。くるくる回す、マニ車
マニ車は、チベット仏教の中でも、特徴のある仏具です。六字真言が刻まれた円筒形で、手に持てる小さいミニマニ車から、チベット寺院の壁面や寺院内に設けられている大きなマニ車まであります。
タルチョは掲げた旗が風になびくことで信仰となるというのと同じように、マニ車を時計回りにくるくる回し続けながら、マントラを唱えることで信仰となる、ということになります。
字の読めない人でも、このマニ車を回すことで、マントラを唱えたと同じ徳を得ることができるとも言われています。
チベット信仰の中では、同じようなマニ石と言われる、経文の描かれた石を積み上げる習慣や、数珠玉をひとつひとつ永遠に数えながらマントラを唱えるなどの信仰が見られます。
マニ石も、マニ車同様に時計回りに通るのがルールとなっています。
鳥葬
人間が生命を失ったあとの、遺体の処理法のひとつです。チベット高地に住むチベット人にとっては、鳥葬が最も一般的な葬儀のかたちとされています。
魂が抜けたあとの死体は抜け殻にすぎないという考えから、死んだあとの肉体はすべて鳥に捧げて食べさせるという信仰になります。
マントラを唱える
チベット仏教では、観音菩薩のマントラである六字真言が頻繁に唱えられています。だだっ広い境内でずっしりと響く低い声でマントラを唱え続けている光景が見られるのはチベット寺院ならではです。
マントラには大きく分けて2つの意味があり、宗教的な儀礼や祈りとして経文を唱えるものと、瞑想への導きとしてのものがあります。
タルチョの5色と絵と文字
タルチョの5色
タルチョの色は5色。青、白、赤、緑、黄色です。色はそれぞれ意味を持ちます。
青は天や空。白は風。赤は火。緑は水。黄色は地や土を現しています。
この、青、白、赤、緑、黄色の5色は、タルチョに限らず、チベット仏教寺院やチベット文化に関係する道具や仏具に使われている色でもあります。
チベット仏教徒のお宅に伺うと、室内のどこかに、この5色の布を使った飾り付けが設けられて見られます。
タルチョに描かれている絵柄は、ルンタの風の馬や、四神などが描かれて、経文として六字大明陀羅尼 が記されています。
タルチョに書かれている六字大明陀羅尼
「ろくじだいみょうだらに」と読みます。仏教の呪文のひとつで、サンスクリットの6つの字音からなる陀羅尼です。
チベット語で六文字となることから六字真言(シックスシラブルマントラ)と言います。
この六字真言は、梵字の一語一語に意味を持っています。
特に、チベット仏教圏のチベット、モンゴルの仏教徒が盛んに唱えるマントラです。
ネパールのボダナートを訪れた方はご存知でしょうか?
寺院内に入ると、永遠とながれている音楽があります。
♪オム、マ、二、ぺ、メ、フム ♪オム、マ、二、ぺ、メ、フム♪と終わりなく続いて流れています。
オムマ二ぺメフム は、梵字デザインとしてアクセサリーに刻まれていたりTシャツのプリントでお馴染みの方も多いでしょう。
チベット仏教徒は、この六字真言の刻まれたネックレスやブレスレッド、数珠を身に付けることも信仰のひとつだと言います。
タルチョに描かれている四神
「ししん」と読みます。中国の神話に登場する、中国古来の守り神。天の四方を司る神獣です。方位の四神とも言われています。
タルチョには、方位を司る霊獣、青龍、白虎、朱雀、玄武、麒麟が描かれています。
四神のかたちとしての特徴は、
■青龍は、長い舌を出した龍のかたち
■白虎は、細長い体をした白い虎のかたち
■朱雀は、翼を広げた鳳凰のかたち
■玄武は、カメの甲に蛇が巻きついた形をした生き物のかたち
四神には、それぞれには、色、季節、方位などの意味付けがされています。
■青龍 緑、春、東
■白虎 赤、夏、西
■朱雀 白、秋、南
■玄武 黒、冬、北
■麒麟 黄色、中央
ルンタという、もうひとつの名前
タルチョは、ルンタとも言われ、その理由はいくつか説があります。●タルチョの中央に描かれている馬を指して、ルンタと言う説。
●タルチョ自体の別名としてルンタと言う説。
●タルチョの掲げ方の違いによる説。
→旗を横長に掲げるとルンタ(橋の欄干に掲げられている様式)
→三角錐形に掲げるとタルチョ(寺院の塔頂から四方八方、屋根づたいに掲げられている様式)
また、タルチョ、ルンタ、マニ旗、タルチョクなどの呼び名もあります。
タルチョに描かれた馬
旗に描かれている馬は、速い風という意味を持ち、祈りや願いをすばやく届けて想いを成就させると言われています。馬と言えば、日本のお正月に神社で絵馬に願い事を書く風習がありますが、古代日本の習わしによる祈願の対象としての馬も、似たような意味合いがありますね。
タルチョに描く木版印刷
タルチョに描かれている絵や文字は、木の板に掘られたもに、墨汁や絵の具を塗り、その上に紙をあてて摺る、伝統的な木版印刷で作られています。タルチョの絵や文字で表現された木版画は、機械による印刷ではなく、ひとつひとつ丁寧に作られた、チベット民族の手仕事によるものです。
山頂を目指す前にタルチョ
登山前には、安全祈願のために、現地で祭壇を設け、チベット仏教式の祈祷をします(プザまたはプージャと言います)。山岳民族であるシェルパが中心となって、登頂前の儀式の一連を執り行います。
プザに使う仏具として、新品のタルチョを掲げ、登山の安全を祈ります。
その時には、タルチョの旗の上に、登山者それぞれの祈りや願いを文字で書き記す場合もあります。
チベット、インド、ネパール、パキスタン、ブータン、5つの国をまたぐ山々の山頂には、登山家たちの祈りや幸運を祈るタルチョが風に吹かれてなびいています。
ボダナートとタルチョ
ネパールでは、本家のボダナートをはじめ、目玉寺と言われるミニボダナート寺が市内の各地に点在しています。その各寺院には5色のタルチョが掲げられていて、青空によく映える風景が見られます。
中でも有名な2つの目玉寺、ボダナートとスワヤンブナートには、風に吹かれてゆれるタルチョに魅かれて訪れる観光客が絶えません。
ボダナートは、絡み合うほどたくさん吊るされたタルチョと、白いストゥ―パ(塔)と、寺院内に流れるマントラ、僧、チベット料理、あらゆるチベットの文化がダイナミックに混じり合った、異国情緒のある観光名所です。
タルチョには、青い空と風がよく似合います。
風の通り抜ける道や、身近な空間にも、そんなタルチョを飾ってみてもいいですね。
チベットと同じ青空のもと、風になびいたタルチョのように、皆さんの祈りと願いが風に届きますように。
タルチョー(チベットの祈祷旗) |
このタルチョーには経文が書かれており、この旗を飾り、それが風になびく度に、読経したことになるのだそうです。 また、五色の順番は青・白・赤・緑・黄の順に決まっており、それぞれが天・風・火・水・地の五大を表現しています。 私たちの目から見ると、カラフルで綺麗な飾り付けに見えるこの旗達にも、やはりきちんとした理由があり、生活の全てを宗教とともに生きている、ヒマラヤの人々の祈りが込められているのでしょう。 このタルチョーは、ネパールで作られたナイロン製の物になりまして、馬の柄と経文が一枚一枚に刷られています。この風の馬が描かれているものを、特にルンタと呼ぶそうです。一本の紐に25枚の旗が縫い付けられており、固定の仕方により、様々な場所でお使いいただけるかと思います。 |
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