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標高4000mの不思議 2000.3.29

 ペルーのアンデス山脈沿いと、ボリビアの多くの土地は非常に標高が高い土地として知られています。インカ帝国の首都であったクスコは標高3400m。ティティカカ湖畔の街プーノは標高3900m。世界最大の塩湖(大きな塩の大地。雨季になると水が溜まる)ウユニはなんと標高4300mから4500m。

 ちなみにボリビアの首都であるラ・パスは標高3800m。まがりなりにも国の首都が富士山よりも高い所にある!!と言うのがまず信じられません。まぁ、とにかく多くの土地が富士山よりも高いのです。


ジャガイモはアンデス原産。標高4000mの所でも収穫できます。これは日本では見かけない種類ですが、日本で見かける種類もあります。

 ウロス島と言うトトラ(葦の一種)で作った浮島で有名なティティカカ湖も標高は3900m。そこの中にタキーレ島と言う島がありますが、島の最大地点は4000mを越えます。その高度の中でも、ジャガイモ、とうもろこし、麦、キヌア、菜の花などを作って人々は生活しています。

 日本だったらとっくに森林限界を超えているはずなのですが、ここでは普通に農耕ができます。標高4000mの高地で日本で良く見た菜の花が咲いているのを見て新鮮な驚きを覚えました。森林限界は空気の薄さによって決まる物ではなく、その環境によって決まるのだと改めて思いました。

 さて、ここまで読んで来て「標高4000mなんて言ってるけどたいした事ないんじゃないの?」と思われたのではないでしょうか? そんな事はぜんぜんありません。標高4000mと言うのは私達日本人にとっては未知の領域。その中の面白い事を何個か紹介してみましょう。

 1、息が辛い

 まず、標高の高い所に上がって来て最初に感じるのがこれ。空気が薄くなるのであたり前ですね。まぁ、とにかく息が辛いのです。標高3400mのクスコでも、30段ある階段を一気に登れません。一段一段ゆっくり登って、10段ずつで休みをいれないととても登れないのです。いくらゆっくり行っても、最後は必ず息が上がってしまいます。また、普通に歩いていてもなぜか疲れがたまります。酸素が体内に十分に行き渡らない為だと思いますが。

 酸素が少ないと言う事の副作用として、頭がボーっとすると言うのがあります。私達はそんなに感じませんでしたが、他の旅人が「なんかさ、10Sol出して7Sol払うとするじゃん。そんなの、すぐに7Solお釣りもらうって分るよね? でも、ぜんぜんわかんないんだよ。」と言っていました。ちなみに私達は、チェスをしていて、さっぱり頭が回らないと言うのを経験した事があります。


私達の宿の前の階段。30段位しかないのに辛い…

 2、ライターが点かない

 標高が高いと、ライターの点きが悪くなります。まずダメなのがワンタッチ式の電子ライター。標高3000mを越えるとただのゴミになります。いくらやっても点きませんので、私はじめ壊れたかと思って捨ててしまいました。

 擦り石がついている普通の100円ライターも3500mあたりから非常に点きが悪くなります。標高の高い所での正式な点け方は、まずガスを出しておいて、石を擦ると言う方法。これだと30%位の確率で点きます。

 3、酒がまわる

 標高が高いと、なんだか知りませんがやけに酒が回ります。飛行機の中でも非常に酒が回り易いと言う話を聞いた事があるので、空気の薄さの問題なのでしょう。

 あるクスコにいた夜の事。私達がHPを作っていたら知り合いの女の子が入って来て、「ウメさん、助けて下さい」って言ってきたのでした。

  「どうしたの?」って聞いたら、「東大生の男の子が、酒飲み過ぎて倒 れちゃったんです。なんか、ラム酒をコップに半分位ですけど飲んで、その後ごはん食べに行って、ごはんの後、ここの坂上がってきたらいき なりもう歩けないって言って倒れちゃったんです」との事。

  「この高度(3395m)でお酒は効くからねぇーーー」とか言いつつ、その彼を助けに行って、最初は大丈夫かと思っていたのですが、徐々に体 調が悪くなって、ついには「すいません。酸素吸入出来る所ありますか?」と言い出す始末。

 そのまま置いておいたらまずそうなので、その前2日間酒をご馳走にな っていたNAO TUORに連絡して、タクシーでそこに向かったのです。 タクシーの中で彼は「後何分ぐらいですか?」を繰り返し、タクシーを 降りる時には彼の体が完全に動かなくなっていて。

 到着後、すぐに酸素吸入を受けてなんとか助かったのですが、酸素がな かったら危なかったかもしれません。 こう言った事態がここクスコではちょくちょくあるらしく、ツアー会社 の車の中と、ある程度大きなホテルには酸素ボンベを備え付けておく義務があるそうです。

 と言う事だったのですが、大変でした。


温泉の源泉で温泉卵。沸騰しているのに湯温は85度。

 4、米が炊けない

 旅は自炊派の私達ですが、ホントこれにはほとほと参りました。お湯は沸くんですが、沸騰したお湯の中に指をつっこめるってどういう事でしょう? 標高が高くなると、沸騰したお湯の温度が低くなるのですね。お湯は標高3800mで、85度位で沸騰します。

 それによる弊害として…まず、お米が上手く炊けません。お米は普通に炊こうとすると芯ありで炊けてしまいます。お米を芯なしで炊こうとすると、外側がぐちゃぐちゃになってしまって美味しくありません。

 パスタはまだ大丈夫ですが、茹で時間9分と書いてあるものが13分位かかります。出来あがっても、中はちょっと固く、外はふにゃふにゃと言う余り美味しくない物が出来あがるのです。

 でも、そのおかげで嬉しい事が一つ。85度の温度は温泉卵にバッチリなんですね。沸騰したお湯に5分位卵を入れておくだけで、黄身が固く、白身がとろとろの美味しい温泉卵が簡単に出来るのです。

 5、陽射しが強い

 空気が薄いので、陽射しが非常に強くなります。真夏の海岸にいるよりもきっと強いでしょう。太陽の下にいると、肌がぴりぴりしますし。私もKも一日外で遊んでいたら、顔がすっかり日焼けしてしまいました。

 6、星がきれい

 空気が薄いので、非常に星がきれいです。今まで中米、南米の色々な星空を見てきましたが、やはり標高の高い所の方がきれいな様です。

 そのきれいさは、とても口では言い表せませんが、あえて言うと「天の川がまぶしすぎる」と言う感じでしょうか?

 と言うことで、色々標高4000mの不思議を紹介してみました。まぁ、正直言って早くふつうの標高の所に戻りたいと思うのですが、標高4000mの所に居ると言うのもなかなか出来ない体験なので、楽しんでみようと思います。 

モドル