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インカの酒チチャ 2000.3.11 遥かインカ時代、収穫の喜びとともにあった酒がありました。インカにおいては、全ての作物は皇帝のものであり、その年の収穫は一旦皇帝の元に集められ、それを全員に再配分することで皇帝の権威が高められて来きました。その年の収穫の責任は全てインカ皇帝の責任とされ、収穫の祭り(インティライミ)でインカ皇帝は生贄の心臓をえぐり取ってそこに浮かぶ血管を見て来年の収穫を予想したと言われています。インティライミでは収穫の喜びを分かち合うため、チチャと呼ばれる酒が皆にふるまわれたと考えられています。 そんなインカの酒チチャは大雑把に言うと、とうもろこしから作られたどぶろくです。日本のどぶろくが米から作られるのに対して、ペルーのチチャはとうもろこしから作られます。日本においてどぶろくの自家醸造は許可されていませんが、ペルーでは問題ないようです。
チチャは、もともとは口噛み酒として発生しました。口噛み酒というのは、非常に原始的な酒の作り方で、原料となるとうもろこしを口で噛み、唾液によって糖分を与え、それによってアルコール発酵を促す酒の作り方です。口噛み酒は、インカだけのものではありません。たとえば南洋ポリネシアではカバカバと呼ばれる口噛み酒が現代に残っています。しかし現在、残念な事にチチャを口噛みで作る習慣は残っていません。 チチャはしかし、いまだに手作りで作られているお酒です。チチャ醸造が盛んなのは、ペルーの中でもごく一部。インカの首都であったクスコ、その隠れ家であるマチュピチュを結んだ線上のウルバンバ渓谷と言われる場所です。 ウルバンバ渓谷において、チチャはチチェリア(チチャ屋)で飲むことが出来ます。チチェリアは、決まった店と言う訳でなく、露店や、そこらへんの適当な場所に店を開いている事が多いです。その為、チチャが飲める地域に行っても、チチェリアと言う看板があるわけではありません。ウルバンバ渓谷ではチチャがあるよ、チチャを売っているよと言う事を示す為に店先に赤いビニールを来るんだ棒を掲げておく習慣があります。
チチャの作り方は、地域、人で異なりますが、基本的には、極めて簡単です。 まず、とうもろこし を水に浸して数日放置してホラと呼ばれるモヤシ状にします。芽が3〜7cm位になったら天日乾燥して、石臼で粉にします。 この粉を大鍋で数時間煮て、土製の甕に入れます。 数日放置で、チチャの出来上がりです。 現在では、土性の甕に入れて放置する人は少なく、ホラジュースをプラスチックの容器に入れ、前回のチチャを注ぎ込み、発酵を促進する方法が取られています。牛乳に少量のヨーグルトを入れると新たにヨーグルトが出来るのと同じ原理です。そうする事で、いつも同じ味のチチャが安定して作れるのです。
チチャの味は、基本的にすっぱいもの。私達日本人にはちょときついですが、慣れればどうってことありません。 チチャは自家醸造なので、色々なチチャがあります。また、今まではチチャ=お酒と言う説明をしてきましたが、お酒でないチチャもあります。ウルバンバ渓谷において飲まれているチチャの50%は殆どアルコールを含んでいない乳酸発酵をしたチチャジュースです。これを現地の人はプロ・チチャ(純粋なチチャ)と呼んでいます。 それでは、代表的なチチャをちょっと紹介してみます。 チチャ・モラーダ…紫とうもろこしから作られるチチャでアルコールは含まれていません。紫色の液体で、現在では粉ジュースにもなっています。 チチャ・デ・ホラ…アルコール発酵しているチチャ。前述のホラ(とうもろこしを発芽させたもの)からこの名前がきています。 チチャ・デ・マイス…アルコール発酵していないチチャ。チチャ・デ・マイスとは、とうもろこしのチチャと言う意味です。 チチャ・デ・フルータ…チチャ・デ・ホラや、チチャ・デ・マイスに苺などのフルーツをすりつぶして入れたチチャ。 チチャ・デ・キヌア…NASAの宇宙食にも採用されたと言う栄養豊かな植物キヌアから作られるチチャ。口あたりまろやかで、殆どアルコールは含まれていません。 色々チチャを紹介してみましたが、まだまだ色々なチチャがあります。また、別の場所に行って変わったチチャを発見したらレポートしてみます。
SpetialThanks:バリースタ荒関氏、條田さん |