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旅人の横顔2〜今井 義明さん〜 99.9.19
今井さんの事は林田さんから一週間前に「梅原君。今井さんの事書かせてもらうといいよ。画家さんでね、世界中で展覧会やっている人なんですよ。」と言う話を聞いていたのでした。その話を聞いてから今井さんってどんな人なんだろう?と思ってはいたものの、なかなか話をする機会に恵まれなかったのですが…。今日、今井さんがメキシコシティーで展覧会を開かれた所にお邪魔し、そこで私がシタールを弾かさせてもらったのをきっかけに色々話を伺うことが出来ました。
梅原(以下U)「ちょこちょこと話は聞いていたのですが…何か世界中で絵を書いて展覧会をされているそうで。」
今井(以下I)「ええ、そうですね。今回で94回目になるんですけどね。自然をモチーフにして絵を書いているんですね。」
U「なるほど。何で自然がモチーフなんですか?」
I「この地球に今192ですか?の国がありますよね。そこでね、色々な人達が居て生活していて。でも、国が出来る前ってどうだったかって言うとね、人間って海から来たじゃないですか。海の中でカルシウムとって、水とって生活していて。でも、それが陸に上がってきてね。陸にあがってきて色々あるけど、今国があると。人間が住むと木を切り、都市を作り、で、結局ここの様に水が汚染されて水道水とか飲めなくなっている訳ですよ。(注:メキシコ人は水道水は飲まない。ミネラルウォーターの20リットルボトルの物を飲んでいる。)水がダメになると、ほかの動物だって住めなくなるじゃないですか。地球はこの後何百年だって続いてゆくのに…。あと、自然って言うのは、資源でもあるんですね。木があったとするとそれは熱に変わるわけです。木があれば、そこには土だって出来る。そうすると、人間だけでなく、すべての生き物が生きていけるわけです。」
U「ええ。」
I「私は自然を描いてゆく事によってそれを訴えているわけですよ。そして、その国で描いたものをその国で見せて行くんですね。今回だったらメキシコで書いた自然をメキシコで展覧会をやってみせていくと。その国で描いたものを見せて、その国の人達にあなたの国にはこんな自然があるんですよ、こんなに資源があるんですよ、あなたの国にはこんなにすばらしいところがあるんですよと伝えたいわけです。で、やっぱり文章で書くと嘘臭くなりますし、私は絵でそれを表現しようと思っているんですね。」
U「そういえば、今回は屋外で展覧会されていましたけれども、今井さんが屋外で展覧会をされる理由はどこにあるのですか?」
I「屋外で展覧会をするって言うのは重要なんですよ。大衆はその国の代表者じゃないですか。私は大衆に見て欲しいんですね。スーツ着ているような官僚とかじゃなくて、大衆が重要なんです。大衆が声を出して言う、そういう事が重要で。だから私は屋外で展覧会をやるわけです。美術館でやるのは意味ないんですよ。あと、多くの人に見て欲しいですし。今日だってアミーゴのみんなが来てくれてほんとうに嬉しかったですよ。」
U「大衆に見せる、多くの人に見せると言うのが重要なんですね。私もそうなんですけれども、シタールを弾いてお金もらえるのも嬉しいんだけど、多くの人に見て欲しい、聞いて欲しいって思いますし。多くの人に聞いてもらえるとやっぱりすごく嬉しいですよね。そう言えば、この展覧会は何年位前からはじめられたんですか?」
I「30年前からです。」
U「え??30年前ですか?じゃあ、30年も続けられているんですか?」
I「そうですね。30年続けて、94回目で後6回。最近は、カナダ、アメリカ、メキシコとやってきまして、この後はブラジル、ロシアとかでやろうと。国はいっぱいあるんで、全部の国でやるのは不可能なんだけれども、5大陸のすべてでやろうと思っていて。そして、一番最後はパリで展覧会をしようと思っているんですね。」
U「何でパリなんですか?」
I「私ね、パリに4年間居た事があるんですよ。それで。」
U「それでパリに。」
I「ええ。今回は洞窟とか、バスのない所に行って書いているので、荷物もそんなにもてないものですから簡単に書いた絵ですけれども、アミーゴでちゃんと大きく油絵で描きなおしているんですね。パリでの展示会のときは、廻った国すべての国の絵を展示しようと思いまして。その展示会をやるときに、廻った国すべての国の大使に手紙を出そうと思っているんですよ。」
U「夢がありますね。私も暇と金があったらぜひ行きたいです。」
I「その大使に、あなたの国にはこんなに素晴らしい自然がありますよ、こんなに良い国なんですよと言いたい訳です。大使は公用があるので来てくれるかどうかは難しいと思うんですけどね。」
U「30年前に始められたときにも、同じ気持ちで始められたんですか?」
I「そうですね。人生ってほんとに短いですよ。実際、結構生きる人も居ますけど、本当に人生の一番良い時期って20才から60才ですよね。その中で俺はこれをやっていこう、俺はこれを訴えていこうって、思って。人生いろんな生き方があるけれども、俺はこれだって思ったんです。」
U「30年もそれを続けられるって言うのは本当にすごい事ですよね。私なんて本当に恥ずかしいんですけれども、色々な事があんまり続かなくって。こないだも仕事やめてきましたし。30年って言うその年月だけで非常な重み、凄みを感じますよ。」
I「いやいや、そんなたいした事じゃないですよ。誰でも出来ることで。」
U「そんな事はないと思うんですが…。そう言えば、絵を描くときは、先ほど言われたように全くバスの無いところとかに行かれるんですよね。」
I「そうです。絵を描くときは、私は自然がモチーフなんで、そういうところに行くんですよ。バスはやっぱり町と町を繋いでいるものだから、最終地点も町ですよね。その先はヒッチハイクして。トラックの荷台にドラム缶と一緒にのっかて行ったりして。当然アスファルトじゃないし。そこに何時間も乗っていると体がほんとうにおかしくなりますよ。」
U「なにか、先ほど洞窟生活をされているとか…」
I「洞窟はね。暖がとれて、雨もこないし。洞窟は最高なんですよ。その近くに水があれば、生きていけますしね。」
U「食料とかは全部持って行かれるんですか?」
I「水、食料は大切ですからね。全部缶詰で持って行きますけれども。」
U「全部缶詰なんですか。そうすると、やっぱり荷物重くなりますよね?」
I「そうですね。今、荷物が全部で55Kgあって。それでもロスに20Kgくらい置いてあるんですけれども。」
U「え?55Kgですか? 私もシタールとVAIOとで40Kg位ありますけど、それでも荷物が肩に食いこんで大変なんですよ。久しぶりに荷物持ったりすると、ふらふらしちゃったりして。」
I「荷物が重いと、肩に沁みますよね。」
U「最後になりますが、今井さんの展覧会に日本の旗とメキシコの旗がありましたよね。あれはなんでですか?」
I「まず、日本の旗がないと誰がやっているのかわかんないじゃないですか。今日本で国旗をめぐって色々ありますけれどもね。日本人がやっているんだって言うアイデンティティーな訳ですよ。それから、やる場所のその国の国旗をつけて。今日はメキシコだったんで、メキシコと日本の両方の国旗があって。メキシコと日本の分化交流って言うか。そういう風に考えているんですよ。」
U「なるほど。そうなんですか。ありがとうございました。」
今井さんは、非常に人あたりが良く、話好きな人でした。海外で絵を書き展覧会を開くと言うことを30年続けている、それだけでも凄いのに、それを決して威張らず、楽しく、笑いながら話をしてくれる姿が非常に印象的でした。日本の中で仕事をし、悩みながら生きていた私にとって、こう言う生き方もあるんだ、と非常に力づけられたのです。今井さん、ありがとうございました。