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インドのメシにおける基本的傾向と対策 2001.2.23 私達日本人が日本食の事をよく考えてみるとそこにはある一種の傾向がある事が容易に判ります。曰くできるだけ素材に手を加えない、余計な味をつけない、あまり肉を食べない、等々。醤油を使う、味噌を使う以前に日本食とはそう言った傾向をもった食文化だと思います。そして私達がインド食を経験し、食べてみる時、そこにはやはり一種の傾向があるのに気がつくのです。 インド食を日本食を比べてみると大きく違いますが、実は一つだけ共通するポイントがあります。それは肉をあまり食わない事。インドのヒンドゥー教にはよく知られている様に牛は聖なる存在であり食べてはいけないという戒律がありますが、それは牛を殺して食ってはいけないと言うだけの話で、牛乳はもちろん飲んで構いませんし、牛を労務用途に使う事も問題ありません。そう言った思想が根底にあるのか、インドでは肉を食う事はあまり好まれない様です。
私達が肉を手に入れようとする時、牛は当然手に入りづらいですが(全く手に入らないわけではありません。インドには多くのイスラム教信者が居ます。)、それ以外の鳥や豚と言った肉も同様に手に入りにくかったりします。豚の肉を買おうとすると「人のウンチ食ってるからね、食べないほうがいいよ」と嫌がられたりします。インドのほとんどのレストランではベジ(菜食)とノンベジ(非菜食)の2つのメニューが当然の様に用意されていますし、街中には多くのベジ専用レストランがあります。その思想は非常に徹底されていて、ベジとノンベジを同じ鍋はおろか、同じ厨房で作る事すら許さない人もいます。ベジの中にも本当に野菜だけしか食べない人もいれば、卵と魚はOKという人もいますし、金があれば肉を食いたいんだがと言う経済的ベジなんてのもいます。ピュアベジの人は卵ベジと同じ鍋、厨房で作る事を許さないので、1つの家庭に2つ厨房があるなんて事も珍しくありません。 良い例としてインドのマクドナルドがそれに当てはまります。日本のマクドナルドは牛肉100%で売っていますが、インドのマクドナルドは「BEEF&BEEF PRODCTS NO SOLD HERE(牛とその関連商品はここでは売っていません)」と言うのを売り文句にしてるのです。そして、効率性を求めるマクドナルドですら、そのパンフレットに「ベジとノンベジで同じ調理器具を使っていません。また、調理エリアも分けています。お客様がもし望まれるなら厨房に入って確認する事ができます」と書いているのです。乱暴な言いかたではありますが、私はインド食の基本は菜食主義にあると言えると考えています。 インド食のもう一つの特徴に素材の味よりは後付けの味を好む事が挙げられます。インドのスパイスとして有名なモノにマサラがあります。マサラとは、ターメリック、ジンジャー、シナモン、クミン、コリアンダー、コショウ、ニンニク、トウガラシなどのスパイスを合わせた物。このマサラは日本の醤油の様にメーカーが作る物ではなくて、使用するときに使用する分だけ各々の家庭で挽かれるのです。すなわちマサラの味がそっくりそのまま家庭の味でもあります。インド人はこのマサラ味を非常に愛していて、ポテトチップスや、カップラーメンまでマサラ味の物ばかり、果てはマクドナルドまでマサラ味なのには閉口してしまいます。
そのマサラですが、強力なスパイスを挽いた物なので、料理に入れると当然素材の味はあまり残りません。カレーに入れる素材も確かにインド料理では大切なのですが、それよりもマサラのブレンド具合の方がインド人にとっては大切な様です。マサラだけではなくてインドのお菓子も最高に甘いので、もしかしたらインド人は極端な味を好む民族なのかもしれないと私は勝手に思っているのです。 食は気候風土に密着した文化だと思います。日本食は私達が世界に誇れる大きな食文化ですが、インド食もまたインドが世界に誇れる大きな食文化です。日本食が日本の気候風土をベースにして育ってきた食文化なのに対して、インド食は言うまでもなくインドの気候風土をベースにして育ってきた食文化です。私達は日本食がどうしてそう言う特徴を持つに至ったかはなんとなく判りますが、インド食がどうして上記のような特徴を持つに至ったかはあまり判りません。インドをこれからもっと旅行して行くうちにそれが見えて来ればいいなぁ…と思っているのです。 |