「天竺」目指して夫婦モバイル放浪 |
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地球の裏側の日本人街 2000.8.21 日本からブラジルへの移民が始まったのは1908年。サンパウロの南75Kmのサントスと言う港に笠戸丸が到着したのがその始まりです。これをきっかけにして多くの人達がブラジルの土を踏みました。今では全ブラジル人口の約1%が日系人だと言われているほどで、商業、農業、政治などあらゆる分野で日系人は活躍しています。
さて、ブラジルで一番大きな都市サンパウロには、世界で一番大きな日本人街があります。名前はリベルタージ。この街にはありとあらゆる私達日本人が欲しがっているモノ…米、醤油、味噌から雑誌までが揃っていて、また日本分化を本家日本以上に一生懸命残そうとしている街でもあります。そんなリベルタージの中をちょっと紹介してみましょう。 サンパウロの地下鉄リベルタージ駅を下りるとすぐに、朱色の提灯型の街灯が目に付きます。サンパウロの街灯はほとんどが無機質な白色の物なのに対して、ここだけ朱色の街灯でいやがおうにも目を惹きます。私達にとってはどこか懐かしい、ノスタルジアを感じさせる朱色の街灯は、ここが日本人の街なのだと言うことを強くアピールしています。 地下鉄の駅を下り、一歩リベルタージの中に踏み入れると、そこは日本であって日本でない不思議空間が広がっています。朱色の街灯の向うに見える大きな鳥居。鉄柵に囲まれた日本庭園。そして、街のあらゆる所で見かけるミミズ日本語文字。ふと聞こえて来るポルトガル語と日本語。その日本語は自分達の物とはどことなくイントネーションが違ったりしている。日本語が持つ違和感。東洋人と、金髪の白人と、褐色の肌を持つアフロブラジリアンが違和感なく解け込む。まさに、リベルタージはブレードランナーを彷彿とさせる街なのでした。高層ビルの屋上に強力わかもとの看板があって、スピナーが飛んでいても自然と許容してしまいそうなそんな街。ブレードランナーの街がこの現実に忽然と現れた…そんな感じさえ受けてしまいます。 リベルタージの中には、日系人が経営している色々なお店があります。食品店の店頭には日本米の5kg袋が積まれ、一歩中に入ってみるとそこはまるで日本。日本と違うのは通貨の単位が違うことぐらい。日本で売られているありとあらゆる食品、お菓子が所狭しと並び、パック入りのお寿司等も売っています。今まで醤油、味噌をけちけち使っていたのがバカらしくなるほどの品揃え。リベルタージで手に入らない日本食品はない…そんなキャッチコピーを付けたくなるほど。 本屋では、所狭しと日本の本が並んでいました。私達が連載しているYahoo! Internet Guideはもちろんのこと、パソコン関係、武術関係、小説等々。確かに品揃えはそんなに良くなく、置いてある本も1ヶ月遅れだったりするのですが、海外で日本の本が入手可能であると言うだけで大満足。ウメは思わず読みたかった日本のパソコン関係の雑誌をなめる様に読んでしまいました。南米でDOS/Vマガジンが読めるなんて夢にも思いませんでした。ちょっと笑ったのが、TokyoWalkerがあったこと。ブラジルでTokyoWalker読んでも意味ないじゃんと思わず笑ってしまいました。
リベルタージの中には色々な日本食屋があるのですがその中でもブラジルの文化と日本食を上手くマッチさせた店が存在します。それは計り売り日本食。計り売り日本食を説明する前にまず計り売りレストランを説明しましょう。ブラジルではどこに行っても計り売りレストランがあります。計り売りレストランとは、読んで字のごとく料理の重さで課金するシステムのレストランの事。通常の計り売りレストランには、大体10種類、多い所で20種類ぐらいの料理が並んでいて、どの料理でも好きに取ることができます。皿に料理を好きに盛って計りに乗せて料金を計算すると言う、まぁとにかくお金が無い時でも満足、自分の好きな物だけ食べたい時でも満足、サラダだけ食べたい時でも満足な都合のいいレストランが計り売りレストランなのです。 その日本食版が計り売り日本食レストラン。料理の内容をブラジル料理から日本食に変えただけと言ってしまうとミもフタもないのですが…。予算に応じて日本食が食べられると言うのはとても良いものです。ハイ。実はこの計り売り日本食レストラン、見かけとは裏腹に頭を使うレストランだったりします。例えばお寿司とごはんが同じ値段で置いてある所があるのですが、そんな所でごはんを取るのは失敗。同じ値段だったらお寿司を取るのが正解とか。だって、お寿司だってごはんだって重さは変わらないはず。それだったら高いお寿司を取った方がお得な訳ですね。重量とコストパフォーマンスと腹持ちを考えて取らないといけない、頭脳が要求されるレストランなのです。 日本人街を日本人街らしくしているのは、店ばかりではありません。店頭に張られているポスターもその1つです。街中を歩くと、色々な日本語のポスターを目にします。いわく、「老人クラブカラオケ大会…約60人のコロニア人気歌手が歌う激動の昭和」だとか、「従業員募集…1世2世不問。ポルトガル語と日本語が出来る方」だとか、「どんな故障でも直します」だとか。日本語で書かれているのにポスターの内容がここはブラジルなんだ、異国なんだとしみじみ痛感させるのです。 また、ブラジルの日系人は日本文化の保存を真剣に考えているようで、街の至る所でその様子が目に付きます。空手道場があったり、日本語教室があったり、そして日本の文化を紹介するためのお祭りも頻繁に催されているようです。 人種も文化も入り乱れているブラジル。人種構成の調査をする事が無意味だとすら言われている混血国家ブラジル。そんな中で自分達のアイデンティティをしっかり保とうとする日系人の姿と、そのフィールドとなるリベルタージは日本から来た私達旅行者にも、日本を再認識する機会を与えてくれるような気がしました。 |